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コラム:受任通知後の債権回収と否認

2024.04.05
1 はじめに

A社とB社との間で取引があり、A社がB社に対し売掛債権を有していたとします。ある日、A社のもとに、B社の代理人となった法律事務所から、B社が支払不能状態となったため自己破産申立ての準備に入った旨の受任通知が送られてきたとします。この場合、A社が、B社に直接かけあって売掛債権を回収することはできるでしょうか。以下では、受任通知を受け取った後に債権回収をするリスクについてご説明します。

 

2 否認権について

破産手続が開始された場合、破産管財人が就きます。そして、破産管財人は、「破産者が支払不能になった後」にした「既存の債務についてされた・・・債務の消滅に関する行為」については、債権者がその行為の当時支払の停止があったことを知っていた場合に限り、破産財団のために否認することができます(破産法162条1項1号イ)

また、「支払の停止(破産手続開始の申立て前一年以内のものに限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する。」とされています(破産法162条3項)

そして、自己破産申立てに関する受任通知は「支払の停止」に該当するとされています(最判平成24年10月19日参照)。

 

3 取引先の債権回収は否認権行使の対象となるか

先の例において、A社は、B社が自己破産申立ての準備に入った旨の受任通知を受け取っています。そうすると、A社は、上記受任通知を受け取った時点で、B社の支払停止について悪意だったことになります。

それでもA社がB社から債権回収をした場合、A社は、破産手続開始決定後、B社の破産管財人より否認権を行使される可能性が高いといえます。その場合、A社はは弁済金をB社の破産財団に戻す必要があります。

 

4 損金処理について

このように、取引先から破産手続の準備に入る旨の受任通知を受け取った企業は、受任通知受領後に当該取引先から弁済を受けた場合、破産管財人から否認権を行使される可能性があります。

そこで、企業は、自力での債権回収を断念し、破産手続において配当を受けることになります。もっとも、破産債権のほかに財団債権や優先的破産債権があり、それらの合計額が破産財団を上回る場合は配当を受けることができません。

このような場合、企業は、税務上、損金処理をすることになります。損金処理について詳しいことは関連記事をご参照ください。

【関連記事】

✔損金処理の方法などについての解説記事はこちら▶コラム:取引先の破産と損金処理

 

5 最後に

以上、受任通知後の債権回収と否認権行使について説明しました。破産手続一般については関連記事をご確認ください。

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