1 はじめに
受遺者や受贈者が複数いる場合において、遺留分権利者が誰に対していくら遺留分侵害額請求をできるかについては、民法1047条1項においてルールが定められています。以下で、具体例を用いて説明していきます。
2 具体例
被相続人は現金500万円、不動産1000万円を有していました。被相続人は、亡くなる直前、相続人である子Aに対し現金250万円と不動産1000万円を、Aの子であるBに対し現金250万円を遺贈する内容の遺言を作成しました。また、被相続人は、亡くなる9か月前、Aに対し1億8000万円相当の不動産、Bに対して現金500万円を生前贈与していました。もう一人の相続人である子Cは誰にいくらの遺留分侵害額請求をすることができるでしょうか。
3 計算過程
1 遺留分算定のための基礎財産
遺留分算定の基礎財産ですが、Aに対する遺贈分1250万円(250万円+1000万円)+Bに対する遺贈分250万円=1500万円が基礎財産に含まれることになります。
また、Aに対する贈与1億8000万円分、Bに対する贈与500万円分は、いずれも亡くなる9か月前になされたものであり、「相続開始前の一年間にしたもの」(民法1044条1項)に該当するので、基礎財産に該当することになります。
よって、基礎財産は、遺贈分1500万円+贈与分1億8500万円=2億円となります。
2 Cの遺留分額(遺留分侵害額)
Cの遺留分額は、2億円×2分の1×2分の1=5000万円となります(民法1042条)。
また、Cの遺留分侵害額は、遺留分額から控除したり、反対に加算したりするものがないので、5000万円-0円+0円=5000万円となります(民法1046条)。
3 請求相手
民法1047条1項1号によれば「受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。」とあります。そうすると、Cは、受遺者であるAに対し1250万円、同じく受遺者であるBに対し250万円の遺留分侵害額請求をすることになります。
Cの遺留分額は5000万円であるところ、遺贈分から計1500万円の遺留分侵害額の返還を受けることになります。そうすると、残りの遺留分侵害額は、5000万円-1500万円=3500万円となります。
この3500万円については贈与分から返還を受けることになります。そして、民法1047条1項2号本文によれば「受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。」とあります。
そうすると、
Aの負担分は、3500万円×(1億8000万円÷1億8500万円)≒3406万円
Bの負担分は、3500万円×(500万円÷1億8500万円)≒94万円
となります。
よって、Cは、生前贈与分について、Aに対し3406万円、Bに対し94万円の遺留分侵害額請求をすることができます。
4 最後に
遺留分について一般的なことは関連記事をご参照ください。
【関連記事】
✔遺留分一般についての解説記事はこちら▶遺留分