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コラム:相続分の指定と遺留分侵害額請求

2024.04.01
1 はじめに

民法902条1項によれば、「被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。」とされています。例えば、相続人が子2名だった場合、法定相続分は各2分の1ずつとなりますが、被相続人は、遺言により、一方の相続分を5分の4、他方を5分の1と指定することができるのです。

ところで、上記の例の場合、子の遺留分はそれぞれ4分の1となります(民法1042条)。そうすると、相続分の指定により遺留分が侵害されていることになります。以下では、具体例を用いて相続分の指定により遺留分侵害が発生した場合の法律関係について説明していきます。

 

2 具体例

被相続人甲は、遺産として不動産と預貯金があり、その総額は1億円でした。他方、甲には負債はありませんでした。相続人は子である乙と丙でした。甲は、乙の相続分を10分の1、丙の相続分を10分の9と指定する旨の遺言書を作成して亡くなりました。乙は丙に対していくら遺留分侵害額請求をすることができるでしょうか。

 

3 計算

遺留分算定の基礎財産は1億円となります。また、乙の遺留分額は1億円×2分の1×2分の1=2500万円となります(民法1043条1項、1042条)。

乙の遺留分侵害額については、乙の遺留分額2500万円から「第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額」(民法1046条2項2号)を控除した額となります。

乙の指定相続分は10分の1なので、乙が取得すべき遺産の額は、1億円×10分の1=1000万円となります。したがって、乙の遺留分侵害額は、2500万円-1000万円=1500万円となります。

よって、乙は、丙に対し、1500万円の遺留分侵害額請求をすることができます(民法1046条1項)。

 

4 まとめ

先の例では、乙は遺産分割において1000万円を取得し、丙から遺留分として1500万円相当の金銭の支払いを受けることになります。そうすると、乙の取り分は、1000万円+1500万円=2500万円(遺産総額の4分の1)となります。

 

5 最後に

遺留分について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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