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コラム:相続開始前の遺産分割協議は有効か?

2024.03.30
1 はじめに

被相続人が亡くなる前、推定相続人で遺産分割協議をした場合、当該遺産分割協議は被相続人が亡くなった後、効力を有するでしょうか。この点が問題となった東京地判平成6年11月25日を紹介します。

 

2 事案

AとBは、平成元年8月2日、次の内容の契約を締結しました(以下「本件契約」という。)。
①Cが死亡した場合には、その遺産のうちからBは7200万円を、Aはその残余をそれぞれ分割相続する。
②AはBに対し、Cの相続開始の時より6か月以内に7200万円を交付する。
③Aは、②の債務を担保するために、A所有の不動産について、Bのため抵当権を設定する。

Cは平成2年11月19日に亡くなりました。その後の平成3年6月11日付で、AはBに対し7200万円を最優先して支払う旨の念書を差し入れていた。

 

3 判旨
1 概要

裁判所は、本件契約は相続前の遺産分割協議であり無効であるが、Aが念書を差し入れた行為は追認にあたるので、本件契約は有効であると判断しました。

 

2 相続前の遺産分割協議が無効であること

遺産分割は、共同相続した遺産を各相続人に分割するものであり、相続人及び遺産の範囲は、相続の開始によって初めて確定するのであるから、その協議についても、相続開始後における各相続人の合意によって成立したものでなければ効力を生じないというべきである。相続放棄は、相続開始後一定期間内に家庭裁判所に対する申述によってされなければならず(民法九一五条一項)、また、相続開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限りその効力を生ずるものであって(同法一〇四三条一項)、これら相続に関する権利の相続開始前の処分が認められないのと同様、遺産分割についても、事前に協議が成立したからといって、直ちに何ら効力を生じるものと解することはできない。民法九〇七条一項は、いつでも共同相続人の協議で遺産の分割をすることができる旨定めているが、相続開始前の分割協議の効力を認めたものとは解されない。民法九〇九条は、遺産の分割は相続開始の時に遡って効力を生ずる旨定めており、これは、相続開始後に遺産分割協議がされるべきことを当然のこととした規定というべきである。」

 

3 相続開始後に追認可能であること

「相続開始前の遺産分割協議が効力を生じないからといって、相続開始後、新たに同一内容の遺産分割協議をすることが許されないものでないことは明らかである。そして、相続開始後、各相続人がこれを追認したときは、新たな分割協議と何ら変わるところはないから、これによって効力を生じることになるというべきである。」

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