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コラム:相続放棄と錯誤取消し

2024.03.24
1 はじめに

相続人が相続放棄の申述を行った後、その申述は錯誤により取り消されるべきであると主張することについては、通説判例上、認められています。

そこで、以下では、相続放棄の申述が錯誤無効にあたると判断した福岡高判平成10年8月26日を紹介します。

 

2 福岡高判平成10年8月26日
1 事案

甲は、会社の株式を取得し経営していたところ、昭和60年3月31日、死亡しました。甲の妻乙、子の丙らは、熟慮期間内に相続放棄の申述をしました。

乙、丙らは、会社の税理士らより、多額の借金がある旨、株券がなければ株主としての権利行使もできない旨を聞かされていました。そのため、乙、丙らは、甲の過大な債務のみを承継させられるものと誤信し、相続放棄をしました。しかし、実際は、会社には1000万円ほどの債務しかなく、株主の権利行使の説明も誤りでした。

乙、丙らは、相続放棄後、相続放棄は錯誤無効(旧民法)であり、甲が有していた会社の株式1万0200株について乙、丙らが準共有持分を有することの確認の訴えを提起しました。

 

2 判旨

裁判所は、次のとおり一般論を述べた上で、乙、丙らの相続放棄申述は要素の錯誤にあたり無効であると判示しました。

「相続放棄の申述に動機の錯誤がある場合、当該動機が家庭裁判所において表明されていたり、相続の放棄により事実上及び法律上影響を受ける者に対して表明されているときは、民法九五条により事法律行為の要素の錯誤として相続放棄は無効になると解するのが相当である。」

 

3 最後に

以上、相続放棄と錯誤取消しについて説明していきました。相続放棄について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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