TOPICS

コラム:被代襲者の得た特別受益

2024.03.13
1 はじめに

孫が祖父を代襲相続する際、亡父が生前に祖父から受けた特別受益が持戻しの対象となるかが問題となります。

 

2 裁判例
1 裁判例1(鹿児島家裁昭和44年6月25日審判)

「なお、被相続人の出損により亡幸二は鹿児島県立第一師範学校を経て蔵前高等工業学校(東京工業大学の前身)を昭和三年ごろ卒業し又亡三郎は官立第一高等学校を経て東京帝国大学を昭和一〇年ごろ卒業し、いずれも特別の高等教育を受けていることが認められるけれども、このような特別受益は、当該受益者のみが享受でき、かつこれを代襲相続人に移転することが不可能であつて、受益者の人格とともに消滅する一身専属的性格のものであるから、受益者が死亡したのちは、代襲相続人に対し受益の持戻義務を課すのは相当でない。」

 

2 裁判例2(大分家裁昭和49年5月14日審判)

「代襲相続人について民法第九〇三条を適用して特別受益分の持戻を行なうのは、当該代襲相続人が代襲により推定相続人となつた後に被相続人から直接特別な利益を得た場合に限ると解すべきであり、したがつてたとえば当該代襲相続人が推定相続人になる以前に被相続人から贈与を受けた場合、あるいは被相続人から贈与を受けたのは被代襲者であり、代襲相続人は当該被代襲者から当該財産を相続したにすぎない場合などは、当該受益分について民法第九〇三条を適用することはできない。」

 

3 まとめ

このように、古い裁判例では、代襲相続人は被代襲者(受益者)の持戻義務を引き継がない、つまり、代襲相続人は推定相続人となった後に受けた特別受益のみ持戻義務を負うことになります。

 

3 学説

これに対しては、持戻し制度の趣旨が共同相続人間の実質的な公平を図る制度であるので、代襲相続人は被代襲者(受益者)の持戻義務を引き継ぐ、という学説もあります。

 

4 最後に

以上、被代襲者の得た特別受益について説明しました。特別受益の一般的な説明については関連記事をご確認ください。

【関連記事】

特別受益の一般的な解説記事はこちらその他の問題(寄与分・特別受益)

無料相談

無料相談

078-361-3370

078-361-3370

お問い合わせ

お問い合わせ