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コラム:特定財産承継遺言と相続債務

2024.03.06
1 はじめに

被相続人が、相続人の一人に対し全ての遺産を相続させる旨の遺言書を作成したとします。このような遺言を特定財産承継遺言といいますが、被相続人は、会社経営をしており、会社の金融機関等からの借入れについて個人的に連帯保証をしていた場合、当該連帯保証債務は相続人にどのように相続されるのかが問題となります。すなわち、複数の相続人がいた場合、特定財産承継遺言のとおり一人の相続人が連帯保証債務を100%相続することになるのか、それとも各相続人が法定相続分に応じて相続することになるのかが問題となります。

 

2 最判平成21年3月24日
1 総論

遺留分侵害額請求の事案ではありますが、最高裁判所は、相続人間、対債権者と区別して判示していますので、以下、紹介していきます。

 

2 相続人間

「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合、遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り、当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり、これにより、相続人間においては、当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。」

 

3 対債権者

「もっとも、上記遺言による相続債務についての相続分の指定は、相続債務の債権者(以下「相続債権者」という。)の関与なくされたものであるから、相続債権者に対してはその効力が及ばないものと解するのが相当であり、各相続人は、相続債権者から法定相続分に従った相続債務の履行を求められたときには、これに応じなければならず、指定相続分に応じて相続債務を承継したことを主張することはできないが、相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し、各相続人に対し、指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げられないというべきである。」

 

3 最後に

以上、特定財産承継遺言と相続債務について説明しました。遺言の一般的なことについては、関連記事をご確認ください。

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