刑法の一部を改正する法律が、令和7年6月1日に施行されます。
以下、拘禁刑の創設と執行猶予制度の拡充の2点を解説します。
1 「拘禁刑」の創設
自由刑は、懲役(現行12条)、禁錮(同13条)、拘留(同16条)の3種類で、比較的重大な犯罪に対しては、懲役と禁錮が併用されてきました。懲役と禁錮の違いは、懲役に限って、作業が義務づけられており、懲役の方が重い刑罰とされています。禁錮刑は、主に過失犯や政治犯など道義的非難に乏しい者に課されてきました。しかし、罪の軽重を道義的非難の程度により区別することは妥当とはいえません。また、受刑者の中には高齢者や障害者など作業を行わせることが適当とはいえない者もいますし、また、受刑者の更生の観点からは作業よりも指導の方が有効な場面もあります。そのため、自由刑を単一化し、全ての受刑者に対し、作業を行わせ、また、必要な指導を行うことができるようになりました(改正12条1項~3項)。
2 執行猶予制度の拡充
⑴執行猶予要件の緩和①
現行刑法では「一年以下」の懲役又は禁錮を言い渡す場合しか、再度の執行猶予はできません。しかし、改正刑法により、「二年以下」の拘禁刑を言い渡す場合に、再度の執行猶予が可能とされました(改正25条2項本文)。
⑵執行猶予要件の緩和②
現行刑法では、保護観察付執行猶予中の再犯の場合、再度の執行猶予を付すことはできませんでしたが、改正刑法では、保護観察付執行猶予中の再犯の場合でも、再度の執行猶予が可能となりました(改正25条2項本文)。ただし、再度の執行猶予の期間中の再犯の場合に、さらに再度の執行猶予を付すことはできません(改正25条2項但書)。
⑶猶予期間経過後の執行猶予取消し
従来は、執行猶予期間中の再犯の場合でも、再犯の判決の確定までに執行猶予期間が満了すれば、前の刑の執行猶予が取り消されて前の刑の執行を受けることは避けられました。しかし、改正刑法では、執行猶予期間中の再犯(罰金以上に限る。)について公訴の提起がされた場合、執行猶予期間満了後も一定の期間は刑の言渡しの効力及びその刑に対する執行猶予の言渡しが継続しているものとみなされます。そのため、再犯の判決の確定までに前の罪の執行猶予期間が満了していたとしても、前の罪の刑の執行猶予が取り消されて刑の執行を受けるという可能性が生じます(改正27条2項)。これにより、いわゆる「弁当切り」(前刑を執行させるための公判の引き延ばし)はできなくなってしまいました。
3 最後に
以上、拘禁刑の創設などについて説明しました。お困りの方は、のむら総合法律事務所までご相談ください。
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