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コラム:介護保険給付の損益相殺の可否

2023.12.22
1 はじめに

事故による後遺症等の影響で介護が必要になったとき、被害者は、加害者に対して、介護に要する費用を、損害として請求することができます。この場合、介護保険給付は損益相殺(控除)の対象となるのでしょうか。

 

2 将来発生する介護費用について

裁判例は、将来介護費用に対する介護保険給付について、損益相殺を否定する傾向にあります(東京地判平成15年8月28日)。この理由について、裁判例は、「給付が確実に受けられるとは到底いい難く、損害額から控除することはもとより、介護費算定の一事情として斟酌することも相当ではないから」と説明しています。近年、介護費用の自己負担割合の改正が行われ、今後、その割合は増えていくことが予想されるため、「給付が確実に受けられるとは到底いい難」いというのはそのとおりです。

最高裁でも、介護保険給付と同じく公的給付である遺族年金の損益相殺の可否が問われた事案において、将来の遺族年金については、現実に履行された場合と同程度にその制度の存続が確実であるということができないとして、損益相殺を否定しました(最大判平成5年3月24日)。そのため、公的給付の損益相殺は、否定される傾向にあるといえるでしょう。

しかしながら、賠償額算定において、介護保険給付を一定程度考慮したといえる裁判例も散見されます(大阪地判平成19年1月31日、東京地判平成22年3月26日)。確かに、介護保険制度が短期間で大きく変動するとまではいえず、その場合、介護保険給付で賄われる部分については、二重取りとなってしまうことは否定できません。

以上をまとめると、介護保険料の将来分の損益相殺は、基本的には否定されますが、事故当時の被害者の年齢や将来の制度変更の蓋然性等の事情から、損害賠償額の算定にあたり、一定程度、介護保険給付が考慮される可能性もあります。

 

3 既払の介護保険給付について

既払の介護保険給付については賠償金から控除されます。介護保険法21条1項が、「市町村は、給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。」と規定しているためです。

 

4 最後に

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