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コラム:第三者からの情報取得手続の概要

2024.02.28
1 はじめに

令和元年度の民事執行法改正により、第三者からの情報取得手続が整備されることになりました。以下、その手続の概要を説明していきます。

 

2 不動産に関する情報取得手続
1 債務名義

執行力のある債務名義の正本」(民事執行法205条1項1号)となります。

 

2 財産開示手続前置

財産開示手続前置が必要となります(民事執行法205条2項)。これは、公的機関の助力は、財産開示手続を経ても情報を取得できない、完全な弁済を受けられない場合にようやく受けられるものであるという思想に基づきます。

 

3 債務者への事前告知

手続保障の観点より、債務者に決定を送達し執行抗告の機会を提供したうえで、確定した後に第三者に情報提供命令を発すべきとされています(民事執行法205条3~5項)。

 

3 給与債権に関する情報取得手続
1 債務名義

給料は生活の糧であり、その給料が差し押さえられると、日常生活に支障が生じるおそれがあります。そこで、勤務先情報を取得できる債権者は、保護の必要性が高い債権に基づく場合に限定されるべきです。

そこで、執行力のある債務名義の執行力のある債務名義の正本のうち、①扶養義務等に係る請求権、②人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権である場合の2つに限定されます(民事執行法206条1項本文)。

 

2 財産開示手続前置

財産開示手続前置が必要となります(民事執行法206条2項、205条2項)。

 

3 債務者への事前告知

債務者に決定を送達し執行抗告の機会を提供したうえで、確定した後に第三者に情報提供命令を発すべきとされています(民事執行法206条2項、205条3~5項)。

 

4 和解調書などの条項について

上述のとおり、給与債権に関する情報取得手続の場合、債務名義が損害賠償請求権であれば、人の生命若しくは身体の侵害を内容とするものに限られます。

和解調書、調停調書、執行証書の場合、単に、「和解金」、「解決金」と記載したとすれば、人の生命若しくは身体の侵害を内容とするものか判別できません。そこで、条項は「本件事故による人身損害に係る損害賠償債務」と明確に記載しなければなりません。

 

4 預貯金債権等に関する情報取得手続
1 債務名義

執行力のある債務名義の正本」(民事執行法207条1項本文)となります。

 

2 財産開示手続前置なし

2・2からすれば、預貯金債権等に関する情報取得手続も、財産開示手続が前置されると思われます。

しかし、預貯金債権等に関する情報取得手続において、財産開示手続が前置された場合、債務者は強制執行をおそれ、財産を隠匿する可能性があります。

そこで、預貯金債権等に関する情報取得手続においては、財産開示前置を要求しない手続としました。

 

3 債務者への事後告知

預貯金債権等に関する情報取得手続においても、債務者への手続保障の観点から、事前告知を採用すべきとも考えられます。しかし、これを貫いた場合、債務者による財産隠匿のリスクがあります。そこで、債務者には事後告知されることになります。

 

4 債権者側の動き

債権者側からすれば、預貯金債権に関する情報取得手続は、財産開示手続の前置は要求されず、強制執行の不奏功等の要件のみとなります。したがって、債権者は、他の情報取得手続、財産開示手続に先立って、預貯金債権に関する情報取得手続をとるべきでしょう。

 

5 最後に

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