1 撤回擬制について
被相続人が、遺言書を作成し、その後、別の遺言書を作成したが、最初とその後の遺言内容と抵触するときは、「その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす」とされています(民法1023条1項)。また、被相続人が遺言書を作成したものの、「遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合」、前の遺言は取り消されたものとみなされます(同条2項)。
以下では、遺言書を作成した後の離縁が「遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合」に該当するかが問題となった最判昭和56年11月13日について説明します。
2 事案と判旨
被相続人甲は、乙から終生扶養を受けることを前提とし、乙と養子縁組をし、その所有する不動産の大半を乙に遺贈する旨の遺言書作成しました。ところが、甲は、その後、乙に対する不信の念を深くし、協議離縁することになりました。この協議離縁をもって「遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合」(1023条2項)に該当し、遺言を取り消したものとみなされるのかが問題となりました。
裁判所は、まず、1023条の法意について、「遺言者がした生前処分に表示された遺言者の最終意思を重んずるにある」と確認した上で、「同条2項にいう抵触とは、単に、後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不能となるような場合にのみにとどまらず、諸般の事情より観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合をも包含するものと解するのが相当である。」と一般論を示しました。
そして、協議離縁は前に本件遺言によりされた遺贈と両立せしめない趣旨のもとにされたものというべきとし、協議離縁により遺言を取り消したものとみなしました。
3 最後に
以上、遺言撤回と養子縁組解消について説明しました。遺言の一般的なことについては、関連記事をご確認ください。
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