1 はじめに
ある会社に対し、裁判所から、会社に在籍する従業員の給料を差し押さえる旨の債権差押命令の書面が届きました。この場合、どのように対処すればよいかについて説明していきます。
2 給料全額を支払うことはできない
債権者は「その支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分・・は、差し押さえてはならない」とされています(民事執行法152条1項)。したがって、従業員に対する債権者が差し押さえることができる給料の範囲は、原則として、月額手取りの4分の1となります。
そうすると、債権差押命令の送達を受けた会社は、従業員に対し、月額手取りの4分の1を支払うことができなくなります(民事執行法145条1項、5項)。
3 陳述書を返送しなければいけない
裁判所から送達された書類の中には、債権差押命令の書面のほかに、陳述書が入っています。会社は、送達の日から2週間以内に、陳述書に必要事項を記入し、裁判所と債権者に返送しなければいけません(民事執行法147条1項)。
会社が期限内に陳述書を返送しなかったとき、これによって生じた損害を賠償する義務が発生することになります(民事執行法147条2項)。そのため、会社は、なるべく早くに陳述書を記入し、返送する必要があります。
4 債権者への支払い
債権者は、債務者に差押命令の書類が送達された日から4週間経過した後、会社に対し、当該従業員の月額手取りの4分の1の支払いを求めることができます(民事執行法155条2項)。この債権者からの会社に対する支払請求のことを取立権といいます。
また、「給料・・に係る債権に対する差押えの効力は、・・差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。」ことになります(民事執行法151条)。したがって、会社は、債権者に対し、債権者の請求額に満つるまで、毎月、当該従業員の月額手取りの4分の1の支払いをすることになります。
5 最後に
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