1 はじめに
亡くなった成年被後見人の火葬埋葬や葬儀について成年後見人がどこまで関与することになるか問題となります。以下では、従前の取り扱い、改正法の内容を説明していきます。
2 改正前
成年被後見人が亡くなったことは成年後見の終了事由となります。そのため、成年被後見人の死亡後、成年後見人の法定代理権は消滅することになります。したがって、成年後見人が、葬儀社との間で火葬等の契約を締結することは原則としてできないことになります。
もっとも、相続人がいないなどやむを得ない事情が存在する場合、元後見人は、火葬等の契約を締結する必要があります。
そこで、従前、元後見人は、委任契約に準じた応急処分(民法874条、654条)、事務管理(民法697条以下)の法理に基づき、火葬等の契約を締結していました。
3 条文の新設
このように、成年後見人は、民法の法理に基づき火葬等の契約をしてきましたが、その権限が不明確であるため、明文の規定を設けるべきであるという意見がありました。
そこで、成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法 律が制定され、新たに民法873条の2が新設されることになりました。
具体的には、「成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、」「家庭裁判所の許可」を得て、「その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為」をすることができる、となりました。
4 葬儀や永代供養について
民法873条の2の「火葬又は埋葬」には、納骨は含まれますが、葬儀や永代供養は含まれないと解されています。葬儀、永代供養は宗派などにより様々な形態がありうるところ、後に相続人との間でトラブルになる可能性もあるためです。
したがって、元後見人は、葬儀や永代供養の契約を締結することはできないことになります。
5 改正前の運用について
以上のとおり、元後見人は、民法873条の2が新設されたことにより、火葬埋葬の契約を締結するために家庭裁判所の許可を得ることになりました。
もっとも、応急処分や事務管理の法理に基づく改正前の運用が法改正により一切できなくなったとはいえない、とする考え方があります。これによれば、元後見人は、応急処分に該当する行為であれば、家庭裁判所の許可なく火葬などの契約を締結することができることになります。
6 最後に
以上、亡くなった成年被後見人の火葬などについて説明しました。お困りの方は、のむら総合法律事務所までご相談ください。
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