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コラム:治療費の相当性が争われた裁判例

2023.12.23
1 はじめに

交通事故の場合、事故発生日から一定期間、整形外科などの医療機関に通院することがあります。

ところで、治療費は、必要かつ相当な実費が事故と相当因果関係のある損害となります。実際に支出した治療費全額が損害とならないことに注意が必要です。

そのため、裁判例では、治療の必要性や相当性が争われることがあります。以下では、これが争点となった大阪地判令和3年9月29日(自動車保険ジャーナル2126号掲載)を紹介します。

 

2 裁判所の判断
1 身体に対する衝撃の程度

「・・・事故状況からすれば、衝突後、原告及び原告二輪車は転倒せず停止しており、原告二輪車については後部マフラー部に損傷が生じ、被告車については前部ラジエターグリル部近辺のプラスチック部品が割れる損傷が生じたにすぎないことからすれば、原告二輪車を通じて原告の身体に及んだ外力は大きくはない。」

 

2 不意打ちではないこと

「そして、原告は、被告車の追突を予期しつつ、両足、両膝、両腕で原告二輪車の車体をホールドしながら身構えて、外力に対する防御的な姿勢をとることにより過伸展・過屈曲運動を妨げていることからすれば、本件の受傷機転は、予期できない不意打ち的な追突によりむち打ちが生じる場合とはやや異なったものとなっており、外力の原告の身体に対する影響はより限定的なものになるといわなければならない。」

 

3 他覚所見のない軽微な頚椎捻挫及び腰椎捻挫であること

「そうであれば、既にみたとおり、原告二輪車を通じて原告の身体に及んだ外力は大きくはなく、それによる原告の身体に対する影響は限定的なものであること・・にも照らせば、原告は、本件事故により、他覚所見のない軽微な頚椎捻挫及び腰椎捻挫を負ったにとどまるというほかはない。」

 

4 相当な治療期間

「そして、上記認定の原告の症状及び診療の経過によれば、平成30年4月頃から症状の一部が天候により左右され、同年5月頃にはめまいは気温差注意とされており、同年6月以降には投薬治療による改善効果が乏しくなっていることからすれば、原告の症状固定日は同年5月末日であり、相当治療期間は、本件事故日から同年5月末日であると認めるのが相当である。」

 

5 まとめ

裁判所は、事故日(平成30年2月16日)から3か月半で症状固定に至ったと判断しました。身体に対する衝撃の程度が軽微で、かつ、カルテ上、症状が天候や気温差といった外的要因によって左右されたり、投薬治療の改善効果が見られない場合、症状固定と判断される時期が早まる傾向にあります。

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