1 はじめに
民法は、相続欠格事由として、「相続に関する被相続人の遺言書を・・隠匿又は破棄・・した者」は「相続人となることができない。」と定めています。(民法891条5号)。
以下では、民法891条5号の「遺言書」の意義を確認した上、相続欠格者がいる場合の相続権確認訴訟について説明していきます。
2 「遺言書」とは?
民法891条5号の「遺言書」とは、自筆証書遺言のことを指します。
公正証書遺言を作成した場合、原本を公証役場で保管することになります。また、自筆証書遺言について遺言書保管制度を利用する場合、原本を法務局で保管することになります。したがって、相続人が公正証書遺言や上記自筆証書遺言を破棄することはおよそできません。
よって、民法891条5号は、自筆証書遺言を自宅等で保管している場合に適用されることになります。
3 相続権不存在確認訴訟について
最判平成16年7月6日では、「共同相続人が、他の共同相続人に対し、その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,固有必要的共同訴訟である。」としました。
したがって、相続人Aが、相続人Bが実家に保管されていた自筆証書遺言書を破棄したので、相続欠格事由に当たるとして(民法891条5号)、Bが相続人の地位を有しないことの確認を求める民事訴訟を提起する場合、Bだけでなく、他の相続人C、Dも訴訟の当事者としなければ訴え却下となります。