1 はじめに
破産者と前妻との間に未成熟子がおり、破産者が前妻に対し毎月定額の養育費を支払っていたとします。このようなケースにおいて、破産者が、破産手続開始決定までの間に発生した養育費を支払うことについて、破産手続、免責手続との関係で問題となるかについて説明していきます。
2 破産手続との関係
破産手続開始決定前に発生した養育費支払請求権は、破産債権に該当することになります。そのため、破産者は、破産手続申立時、債権者一覧表に養育費支払請求権を載せなければなりません。
また、養育費支払請求権は破産債権に該当するため、破産者は、前妻に対し、破産手続によらずに養育費を支払うことはできないのが原則となります。
したがって、破産者が、受任通知後、破産手続開始決定前、前妻に対し、養育費を支払った場合、偏頗弁済となり、否認権行使の対象となりえます(破産法162条1項1号イ、162条3項)。
しかしながら、一般的には、養育費支払の名目で不当に財産流出した場合、あるいは著しく過大な養育費の支払いといえるような特別なケースは別ですが、そうでない限り、不当性がないため、偏頗弁済に該当せず、否認権行使の対象とはならないとされています。
3 免責手続との関係
上述のとおり、養育費支払の名目で不当に財産流出した場合、あるいは著しく過大な養育費の支払いといえるような特別なケースでは、破産財団を毀損させたとして、免責不許可事由に該当することになります。
他方で、養育費の支払いに不当性が認められないケースでは、偏頗弁済とならないので、免責不許可事由にも該当することはありません。
なお、養育費請求権は非免責債権となります。そのため、元妻(権利者)は、破産手続終了後、配当を受けられなかった部分について、元夫(破産者、義務者)に引き続き支払うよう請求することができます。
【関連記事】
✔非免責債権についての解説記事はこちら▶コラム:非免責債権の種類
4 最後に
以上、破産手続開始決定前の養育費支払いについて説明しました。自己破産については関連記事もご参照ください。
【関連記事】
✔自己破産について一般的な解説はこちら▶自己破産
✔のむら総合法律事務所に関するご案内はこちら▶事務所紹介