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コラム:資金提供と寄与分

2023.12.27
1 はじめに

被相続人が個人事業を営んでいる場合において、相続人が被相続人に運転資金として金銭出資したりするなどした場合、寄与分(民法904条の2第1項)が認められる場合があります。このように、相続人が被相続人に金銭を出資した場合の寄与分は、金銭出資型の寄与分と言われています。

一般的には、金銭出資型の寄与分が認められるためには、以下の要件を満たす必要があると言われています。
①特別の寄与があること
②無償であること
③財産の維持又は増加との因果関係があること

以下、各要件についてポイントに絞って説明し、裁判例を紹介します。

 

2 各要件について
1 特別の寄与

通常の扶養義務の範囲を超える財産上の利益の給付が必要となります。
例えば、寄与分を主張する相続人が被相続人名義の自宅を購入したり(後述の裁判例参照)、被相続人名義の自宅の住宅ローンの支払いをしていた場合になります。

 

2 無償性

無償ないしそれに近い状態が必要です。
したがって、寄与分を主張する相続人が被相続人名義の自宅の住宅ローンを支払っていたものの、その自宅で暮らしていた場合、無償とは認められない場合があります。

 

3 被相続人の財産の維持又は増加との因果関係

被相続人と会社は別人格であるため、相続人の一人が被相続人が経営する会社に金銭出資した場合、原則として寄与分は認められません(ただし後述の裁判例)

 

3 裁判例
1 和歌山家裁昭和59年1月25日審判

この事案は、寄与分を主張する相続人は妻、被相続人は夫でした。
妻は、夫と婚姻後、引き続き就労し、1500万ほどの貯金をつくりました。
その後、妻は、夫と相談の上、夫名義で宅地と居宅を1385万円購入しました。そのうち1255万円、割合にして90%程度は妻の出捐によるものでした。

裁判所は「かかる事情からすれば、共同相続人の一人である申立人については、相当の寄与分を認めてしかるべき・・」としました。

 

2 高松高裁平8年10月4日決定

この事案は、相続人の一人が被相続人の経営する建設会社の経営状況が芳しくなかったため、被相続人や建設会社に対し資金提供等をしてきた事案でした。前述のとおり建設会社への資金提供は寄与分が認められないのが原則ですが、裁判所は以下のとおり述べ例外的に寄与分が認められる場合があるとしました。

A会社は被相続人が創業した株式会社であって被相続人とは別人格として存在しており、その実質が個人企業とは言いがたい。しかし、被相続人はA会社から生活の糧を得ており、自己の資産の殆どをA会社の事業資金の借入の担保に供し、被相続人から恒常的にA会社に資金援助がなされ、またA会社の資金が被相続人に流用されたりしている。これらの事情に照らせば、A会社は被相続人の個人企業に近い面もあり、またその経営基盤の主要な部分を被相続人の個人資産に負っていたものであって、被相続人がその個人資産を失えばA会社の経営は危機に陥り、他方A会社が倒産すれば被相続人は生活の手段を失うばかりでなく、担保に供している個人資産も失うという関係にあり、A会社と被相続人とは経済的に極めて密着した関係にあったものである。そうすると、A会社の経営状態、被相続人の資産状況、援助と態様等からみて、A会社への援助と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、被相続人に対する寄与と認める余地があるということができる。

 

4 最後に

以上、資金提供と寄与分について説明しました。寄与分について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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✔寄与分一般についての解説記事はこちら▶その他の問題(寄与分・特別受益)

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