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コラム:自己破産とマイホーム

2023.12.09
1 はじめに

住宅ローンを組んで購入したマイホームを残しつつ借金を減らすためには、住宅資金特別条項付きの個人再生申立てを行うことになります。この場合、住宅ローンは従前どおりの条件で払いつつ、圧縮された借金を原則3年で返済していくことになります(詳しくは関連記事をご参照ください)。

このような継続的な返済ができない場合は、破産手続申立てをせざるを得ません。そして、破産の場合、マイホームは残すことができず、基本的には破産管財人が自宅を任意売却することになりますので、破産者は新しい住居を探さなければなりません。

そこで以下では、破産手続申立前、破産手続開始決定後に分けて任意売却の注意点を説明していきます。

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2 破産手続申立前
1 親族への贈与

上述のとおり破産手続を選択した場合、自宅は破産管財人が任意売却することになります。そこで、破産者は、どうせ自宅を失うのであればということで、破産手続申立前、自宅不動産を親族に贈与することがあります。

しかしながら、破産手続が開始された後、破産管財人は、親族に対しては、無償行為否認に基づき、自宅の返還を求めることになります(破産法160条3項)。このように、破産者は破産手続申立前に自宅を親族に贈与したとしても、破産手続開始後に贈与が否定されることになり、かえって親族に迷惑をかけることになります。

また、親族に不動産を贈与する行為は免責不許可事由にも該当します。というのも、「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」に該当するためです(破産法252条1項1号)。

免責決定を得ることが最終目的なので、無償贈与は厳に控えるべきといえます。

 

2 親族への売却

その他に、破産者は、破産手続申立前、自宅を親族に売却し、親族から使用貸借又は賃借して住み続けることも考えられます。

この場合、破産手続開始後、破産管財人は、親族への売却価格が適正価格か否かを審査し、適正ではないと判断することになれば、詐害行為否認(破産法160条1項)をすることになります。この場合も、贈与同様、売買契約が否定されることになります。

そこで、破産者としては、破産手続開始決定後、破産管財人に対し適正価格での売却であることを説明するため、固定資産評価証明書、不動産業者の査定書を準備する必要があります。

 

3 破産手続開始決定後
1 退去を急ぐ必要があること

破産手続が開始された場合、破産管財人は自宅を任意売却をすることになります。この場合、破産者は直ちにマイホームから退去しなければいけないわけではありませんが、買い手が見つかり任意売却の目途が立った場合は速やかに退去しなければいけません。

破産者が破産管財人から退去するよう求められたにもかかわらず退去しない場合、破産管財人は裁判所に引渡命令を申し立てる場合があります。(破産法156条1項)。

 

2 退去に応じない場合は免責不許可となること

また、「不正の手段により、破産管財人・・・の職務を妨害したこと。」は免責不許可事由とされています(破産法252条1項9号)。そのため、破産者が任意に退去しない場合、その行為が破産管財人の職務妨害行為とされ、免責不許可事由に該当することになります。

したがって、破産者としては、破産手続開始決定後、転居先を速やかに確保することが求められます。

 

4 最後に

自己破産手続について一般的な説明は関連記事をご参照ください。

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