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コラム:後遺障害逸失利益の裁判例

2023.12.21
1 はじめに

後遺障害逸失利益は、後遺障害等級が高い場合、比例して賠償額が高くなる傾向にあるので、その金額について争いになることが多いです。以下では、後遺障害逸失利益が問題となった最近の裁判例である神戸地判令和3年9月30日(自動車保険ジャーナル2109号掲載)をご紹介します。

 

2 事案の内容

原告は、自賠責より、アからオの本件事故による後遺障害が残存し、後遺障害併合7級に該当する旨判断されました。

ア 勃起障害につき「生殖器に著しい障害を残すもの」として後遺障害等級9級17号
イ 左精巣萎縮、精子減少症に伴う生殖器の障害につき「生殖器能に著しい障害を残すもの」  として後遺障害等級9級17号
ウ 左足第1から5指の機能障害につき「1足の足指の全部の用を廃したもの」として後遺障害等級9級15号
エ 左殿部から下腿の痛み及び異常知覚等の症状につき「局部に頑固な神経症状を残すもの」として後遺障害等級12級13号
オ 脊柱の変形障害につき「脊柱に変形を残すもの」として後遺障害等級11級7号

 

3 当事者の主張と裁判所の判断
1 原告の主張

ウ、エ、オの後遺障害により、45%の労働能力を喪失した(後遺障害等級併合8級相当)。

 

2 被告の主張

原告に残存するとされる後遺障害のうち就労に対して実質的な支障を来すのは、ウ、エである(オは対象外)。時間の経過とともに、症状への馴化、代償性動作の獲得、筋力の回復などにより、代償機転が働くことが十分に想定されるので、症状固定から当初数年の間については、45%程度の労働能力の喪失(後遺障害等級併合8級相当)を認め、その後は、20%程度の喪失(後遺障害等級併合11級相当)を見れば十分である。

 

3 裁判所の判断

原告の主張が妥当であるとした上で、被告の主張について次のとおり排斥しました。

「原告は、上記①から③(注:ウ~オ)の後遺障害が相俟って症状固定時において45%の労働能力を喪失したと認められるところ、特に上記①の後遺障害の内容を踏まえると、その後の症状への馴化等によって多少代償正動作の獲得が見られたとしても、被告が主張するような明らかな労働能力の回復が見られる蓋然性が高いと直ちにいうことはできない。そして、原告が、症状固定から3年半程度が経過した原告本人尋問の時点においても、左足の指が満足に動かず、また、左足の特に足首から下の部分に常にしびれを感じることから、正常な歩行を行うことができないことが常態となっている旨述べていることも踏まえると、原告に残存する後遺障害について、時間の経過とともに容易に症状への馴化等が見られる状態であるとは認めがたく、被告の主張を採用することはできない。」

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