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コラム:局部の神経症状における労働能力喪失期間

2023.12.24
1 はじめに

交通事故により骨折などの器質的損傷を負い、症状固定後に残存した疼痛が後遺障害と認定された場合、後遺障害逸失利益が問題となります。この場合、労働能力喪失期間を制限する裁判例と、制限しない裁判例が存在します。

今回は、左肩腱板損傷後の左肩部の「疼痛」の症状が自賠責で12級と判断されたが、受傷部位や仕事の内容からして労働能力喪失期間を10年に限定した大阪地判令和3年9月7日(自動車保険ジャーナル2108号掲載)を紹介します。

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2 事案

原告は、本件事故当時26歳の女性であり、A株式会社にアルバイト従業員(ガソリンスタンド事務員)として勤務していました。事故後、株式会社Bに就職し、以降、同社の事務担当社員として就労していました。

原告は、自転車に乗って横断歩道を走行中に左折してきた自動車に衝突され、左肩腱板損傷し、その後の左肩部の「疼痛」の症状がのこりました。

自賠責は、左肩部画像上腱板部分断裂および上関節唇損傷が認められるとし、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられることから、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として別表第二第12級13号に該当するものと判断するしました。

 

3 裁判所の判断

裁判所は、次のとおり判示し、労働能力喪失期間を10年に限定しました。
「本件事故当時の原告の職種(ガソリンスタンド事務員)及び現在の職種(パソコン作業及び電話交換)に照らしてみた場合、左肩痛による顕著な業務上の支障が生じるとは考え難く、身体的負荷を伴う業務について一定の支障が生じ得るとはいえ、原告は、平成28年1月に復職した後、令和元年10月頃までの約3年9か月間、A株式会社における勤務を継続し、洗車等の作業にも従事していたと認められ(原告本人8、9頁)、その間、原告にみるべき減収が生じたなどの事情は窺われない。このように、原告の後遺障害は、原告に顕著な業務上の支障を生じさせるものであったとはいえず、また、左肩痛は局部の神経症状であるため、馴れ化や代償動作の取得等により業務上の支障は経時的に逓減していくものであって(上記のとおり、原告がA株式会社における勤務を継続できたのも、代償動作の取得によるものと考えられる。)、その支障が永続的に生じる蓋然性があるとまで認めることはできない。

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