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コラム:相続開始後に被相続人名義の預貯金口座に入金が行われた場合

2023.12.28
1 相続開始時の残高相当額部分

被相続人の普通預金債権(通常貯金債権を含む)の相続開始時の残高は、相続人が数人いる場合、準共有状態となるので(民法896条,898条,899条、264条)、遺産分割の対象となります。(最高裁平成28年12月19日 大法廷決定)。

このように、普通預金債権(通常貯金債権を含む)は、相続開始と同時に当然に分割されるわけではありません。

 

2 相続開始後に残高が増加した分
1 はじめに

では、相続開始後、被相続人名義の預貯金口座が凍結されず入金が行われ、その残高が増加したとします。この増加分についてはどのように扱われるでしょうか。

 

2 遺産分割の対象とならない考え方

この部分は、相続を直接の原因として共同相続人が権利を取得するとはいえず、これが遺産分割の対象とはならないとも考えられます。

そうすると、被相続人名義の預貯金債権について、相続開始時の残高相当額部分は遺産分割の対象となるが、その余の部分は遺産分割の対象とならないことになります。

 

3 遺産分割の対象となる考え方

前掲の最高裁平成28年12月19日 大法廷決定の鬼丸かおる裁判官は、補足意見において、「相続開始後に被相続人名義の預貯金口座に入金が行われ、その残高が増加した分については、相続を直接の原因として共同相続人が権利を取得するとはいえず、これが遺産分割の対象となるか否かは必ずしも明らかでなかった。」とした上で、以下の見解を述べています。

「多数意見が述べるとおり、上記各債権(注:普通預金債権及び通常貯金債権)は、口座において管理されており、預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、同一性を保持しながら常にその残高が変動し得るものとして存在するのであるから、相続開始後に被相続人名義の預貯金口座に入金が行われた場合、上記契約の性質上、共同相続人は、入金額が合算された1個の預貯金債権を準共有することになるものと解される
そうすると、被相続人名義の預貯金債権について、相続開始時の残高相当額部分は遺産分割の対象となるがその余の部分は遺産分割の対象とならないと解することはできず、その全体が遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。多数意見はこの点について明示しないものの、多数意見が述べる普通預金債権及び通常貯金債権の法的性質からすると、以上のように解するのが相当であると考える。」

3 最後に

遺産分割について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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