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コラム:婚姻費用と潜在的稼働能力

2024.02.23
1 はじめに

婚姻費用の支払義務者が無職の場合、潜在的稼働能力があると認められれば、たとえ無職であったとしても、一定額の収入が認められることを前提に婚姻費用の額が算定されることになります。原審が、直近の給与収入の5割程度の稼働能力を有すると認定したのに対し、抗告審では稼働能力が認められないとした東京高決令和3年4月21日を紹介します。

 

2 東京高決令和3年4月21日
1 事案

義務者は、主治医より、適応障害・注意欠陥多動障害とした上で、現状での就労は困難であるが、環境が落ち着き上記症状が改善されれば、就労は可能と診断されていました。

義務者は、就職活動をしておらず、現在も就労していませんでした。また、市役所に対し精神障害者保健福祉手帳の交付申請をしていました。

 

2 判断

裁判所は、「婚姻費用を分担すべき義務者の収入は、現に得ている実収入によるのが原則であるところ、失職した義務者の収入について、潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解される。」と一般論を示しました。

その上で、上記事情を考慮すれば、義務者において、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず、そのことが婚姻費用の分担における相手方との関係で公平に反すると評価される特段の事情があるとは認められない、判断しました。

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