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コラム:受傷の有無が問題となった裁判例

2024.01.05
1 はじめに

交通事故に遭い傷害を負った被害者は整形外科などに通院し治療を受けることになり、加害者側に対しその治療費を請求することになります。治療費は、通院期間が争われることが多いですが、事故によっては受傷の有無が争われることがあります。
受傷の有無は、受傷機転が想定されるのか、(特に初診時の)診断書や医療記録に痛みを訴えて治療を受けた形跡があるかが問われることになります。
以下では、受傷の有無が問題となった、横浜地判令和3年7月30日(自動車保険ジャーナル2105号掲載)を紹介していきます。

 

2 事案

原告は、ロードバイクを乗車中に事故に遭い右上顎を骨折しました。原告は、それだけでなく、バイクが転倒したことにより、頸椎捻挫、腰椎捻挫、右膝関節の損傷を負ったとも主張しました。
被告は、バイクの転倒を争い、かつ、原告が最初に治療を受けた病院の診断書や医療記録に頸部、腰部、右足の痛みを訴えて治療を受けた形跡がないこと指摘し、頸椎捻挫、腰椎捻挫、右膝関節の損傷は認められないと主張しました。

 

3 裁判所の判断

裁判所は、バイクが転倒したことを認定し、原告が主張する受傷機序は想定ししうるとしました。そして、最初に治療受けた病院の診断書や医療記録には痛みを訴えるなどして治療を受けた形跡がないという原告に不利な事情について次のとおりフォローしました。

すなわち、裁判所は、「・・(注:最初に治療を受けた)病院では、右顎骨骨折というより重大な傷害についての手術を伴う治療が優先されていたのであり、医師や看護師において、症状の確認やカルテへの記載がその点に限られてたとしても不自然でないし、入院して安静状態であった原告においても、顔面の疼痛がある中で、その他の部位の症状について意識が低くなっていたことも十分に考え得る」としました。

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