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コラム:少年事件と被害者保護

2024.02.24
1 はじめに

少年事件では、被害者等は、被害者保護の観点から、事件記録の閲覧することができるなど一定の権利が保障されています。以下では、少年法が定めている制度について説明していきます。

 

2 被害者等による記録の閲覧及び謄写
1 概要

被害者等は、審判開始後、その申出により、犯罪少年(法3条1項1号)、触法少年にかかる事件(同項2号)の法律記録の閲覧謄写をすることができます(法5条の2第1項本文)。

 

2 閲覧謄写できない場合

以下の3つの場合は、被害者等は、法律記録の閲覧謄写をすることはできません。

まず、「閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合」です(法5条の2第1項但書)。

また、「少年の健全な育成に対する影響、事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合」です(法5条の2第1項但書)。

さらに、「申出に係る保護事件を終局させる決定が確定した後三年を経過したとき」です(法5条の2第2項)。

 

3 閲覧謄写の対象

法5条の2第1項本文では、閲覧謄写の対象について「その保管する当該保護事件の記録(家庭裁判所が専ら当該少年の保護の必要性を判断するために収集したもの及び家庭裁判所調査官が家庭裁判所による当該少年の保護の必要性の判断に資するよう作成し又は収集したものを除く。)」と定められています。

したがって、被害者等が閲覧謄写できる範囲は法律記録に限定されることになり、社会記録を閲覧謄写することはできません。

なお、審判開始が要件の一つとなっているため、審判不開始の事件は閲覧謄写の対象外となります。

また、裁判所が要件該当性の判断に際して付添人の意見を聴くことは法文上予定されていません(法22条の5第1項と比較)。

 

3 被害者等の申出による意見の聴取
1 概要

被害者等は、その申出により、犯罪少年、触法少年に係る事件について、被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述をすることができます(法9条の2本文)。

もっとも、「事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは」意見聴取が認められていません(法9条の2但書)。

 

2 聴取方法

法9条の2本文では「家庭裁判所は、・・・自らこれを聴取し、又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取させるものとする。」と定めています。

このように被害者等から聴取するのは、裁判官か家庭裁判所調査官のいずれかになります。また、聴取時期は特に定めがありませんが、実務上は、期日外で聴取が行われています。

 

4 被害者等による少年審判の傍聴
1 概要

被害者等は、その申出により、裁判所の許可を得て、犯罪少年、触法少年に係る事件について審判期日の傍聴をすることができます(法22条の4第1項)。

 

2 傍聴可能な事件の限定

被害者は、すべての事件を傍聴できるわけではなく、以下の3つの犯罪に限定されています(法22条の4第1項)。
①故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪
②刑法211条(業務上過失致傷罪等)の罪
③自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律4条、5条又は6条3項若しくは4項(過失運転致傷等)の罪

また、①~③の犯罪について、「被害者を傷害した場合にあつては、これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限る。」とされています(法22条の4第1項)。そして、「生命に重大な危険」とは、死亡に至る蓋然性が極めて高い場合をいいます。

 

3 傍聴の相当性の審査

家庭裁判所は、被害者等からの傍聴の申出に対し、「少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるとき」に限り、傍聴することを許すことになります(法22条の4第1項)。

「少年の年齢及び心身の状態」としては、少年が低年齢である場合、少年に希死観念ある場合、少年の性的虐待や出生の秘密にかかわる事項が顕出されるおそれがある場合が想定されます。

事件の性質」については、暴走族や暴力団が絡んでいる事件、いじめに関係する事件の場合、少年に対する報復の危険が考慮されることになります。

審判の状況その他の事情」としては、例えば非行事実が争われている場合です。

 

4 付添人の意見聴取

家庭裁判所が被害者等の傍聴の申出について許可するか決する際は、あらかじめ付添人の意見を聞かなければなりません(法22条の5第1項)。

 

5 被害者等に対する通知
1 概要

家庭裁判所は、犯罪少年、触法少年に係る事件を終結させる決定をした場合、被害者等から申出があるときは、その申出をした者に対し、審判結果の通知をすることになります(法31条の2第1項本文)。

もっとも、「その通知をすることが少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でないと認められるものについては、この限りでない。」とされています(法31条の2第1項但書)。

 

2 通知事項

少年及びその法定代理人の氏名及び住居(1号)、決定の年月日、主文及び理由の要旨(2号)になります。

 

6 最後に

以上、少年事件と被害者保護について説明しました。お困りの方は、のむら総合法律事務所までご相談ください。

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