1 はじめに
夫婦に子がおらず、お互いの両親が他界し、兄弟姉妹がいる場合、遺言書を作成したほうがよいとされています。以下、遺言書を作成していなかったとすればどのような事態になるのかについて説明していきます。
2 遺言を作成しなかった場合
遺言書が存在しない場合、相続人間で遺産分割協議を行うことになります。先に夫が亡くなった場合、妻は、夫の兄弟姉妹(や甥姪)と遺産分割協議をすることになります。妻が、夫の兄弟姉妹と連絡が取れる仲であれば問題ないですが、そうではなく没交渉であった場合、兄弟姉妹との遺産分割協議は難航する可能性があります。
3 特定財産承継遺言を作成した場合
このように、夫婦が遺言書を作成しなかった場合、残された夫婦の一方は難儀な遺産分割協議をしなければいけない可能性があります。そこで、夫婦は、お互いが「全ての遺産を相続させる」旨の遺言を作成しておくことが望ましいです。
このような遺言を特定財産承継遺言といいえますが、これを作成しておけば、夫婦の一方は、難儀な遺産分割協議をせずとも、遺言書に基づき、預貯金の解約であったり、不動産の相続登記を行うことができます。
また、特定の相続人に全ての遺産を相続させる遺言の場合、他の相続人の遺留分を侵害することになりますが、第三順位の兄弟姉妹には遺留分が認められていません。特に、第三順位の相続人しかいない場合は遺言書を作成したほうよいことになります。
4 遺言書作成上の注意点
まず、民法975条は、「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない」としています。つまり、夫婦が同じ遺言書に遺言を書くことはできません。したがって、夫婦は、別々の遺言書を作成することになります。
次に、例えば、夫が先に亡くなった場合、妻が作成した「夫に全ての遺産を相続させる」という遺言は無効となってしまいます。妻は、夫が亡くなった後に新たに遺言を作成することも考えられますが、二度手間ですし、遺言能力がなくなってしまい作成できないことも想定されるため、予備的遺言を作成したほうが望ましいです。例えば、「先に夫が亡くなった場合、全ての遺産をユニセフに遺贈する」といった内容の条項を設けることが考えられます。
5 最後に
遺言の一般的なことについては関連記事をご参照ください。
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