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コラム:改正少年法の概要

2024.01.09
1 はじめに

18歳になれば、選挙権や憲法改正の国民投票権が付与されることになりました。また、18歳は、民法上、成人と扱われ、親権に服することがなくなくなりました。このように18歳以上は、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場になりましたが、他方で、いまだ成長途上にあり、可塑性を有する存在です。そこで、少年法では、18歳・19歳の少年は「特定少年」と改正されることになりました。改正少年法はすでに令和4年4月1日より施行されています。
そこで、以下では、改正のポイントについて簡単に説明します。

 

2 検察官送致の特則
1 少年法62条2項

家庭裁判所は、特定少年に係る次に掲げる事件については、同項の決定(注:検察官送致決定)をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの
 死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件であつて、その罪を犯すとき特定少年に係るもの(前号に該当するものを除く。)

 

2 1号

少年法62条2項1号は、改正前からあった規定であり、犯行時16歳以上の少年が故意致死事件を犯した場合、原則として検察官に逆送されることになっていました。

「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」とは、殺人、強盗殺人、強盗致死、傷害致死、危険運転致死になります。

 

3 2号(新設)

少年法62条2項2号は、改正により新設された規定です。
特定少年が、現住建造物放火罪、非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪、強制性交等罪、強制性交等致傷罪、強盗罪(事後強盗罪)、強盗致傷罪を犯した場合、原則として検察官に逆送されることになります。

 

4 強制性交等罪

強制性交等罪の既遂犯は、検察官に逆送されるケースが多いとされています。
ただし、成人の場合、犯罪の内容、被害者の意向、示談や被害弁償の有無によって起訴猶予もあり得ます。逆送決定にあたっては、このような成人の処遇とのバランスも考慮するべきという見解もあります(家庭の法と裁判38号11頁以下)。

 

5 強盗罪

強盗罪は、様々な犯情のものがあるので、強制性交等罪とは異なり、逆送決定にあっては慎重に判断しなければならないとされています(少年法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議第1項)。

 

3 保護処分の特則
1 少年法64条1~3項

1項
・・・家庭裁判所は・・・審判を開始した事件につき、少年が特定少年である場合には、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において、決定をもつて、次の各号に掲げる保護処分のいずれかをしなければならない。ただし、罰金以下の刑に当たる罪の事件については、第一号の保護処分に限り、これをすることができる。
一 六月の保護観察所の保護観察に付すること。
二 二年の保護観察所の保護観察に付すること。
三 少年院に送致すること。

2項
前項第二号の保護観察においては、第六十六条第一項に規定する場合に、同項の決定により少年院に収容することができるものとし、家庭裁判所は、同号の保護処分をするときは、その決定と同時に、一年以下の範囲内において犯情の軽重を考慮して同項の決定により少年院に収容することができる期間を定めなければならない。

3項
家庭裁判所は、第一項第三号の保護処分をするときは、その決定と同時に、三年以下の範囲内において犯情の軽重を考慮して少年院に収容する期間を定めなければならない。

 

2 保護観察処分

保護観察処分の期間は、6月と2年の2種類になります(法64条1項)。

2年の保護観察の場合、特定少年が遵守事項に反した場合、家庭裁判所の決定により、少年院に収容することができるとされました(少年法66条1項)。
この関係で、家庭裁判所は、保護観察処分決定と同時に、1年以下の範囲で少年院に収容することができる期間を定めることになりました(法64条2項)。

6月の保護観察の場合、特定少年が遵守事項に反したとしても少年院に収容されることはありません(法64条2項参照)。

 

3 少年院送致処分

3年以下の範囲となります(法64条3項)。

 

4 虞犯について

虞犯には2種類あります(家庭の法と裁判36号141頁)。
1つ目は、犯罪少年型です。これは、家庭内での暴力、金銭の持ち出し等のように、実体法上は犯罪が成立しているものの、被害届が出ないなどの理由によって手続上は犯罪と認められない事例になります。
2つ目は、問題少年型です。これは、試験観察中に、無断外出、不良交友等の問題行動に及ぶ事例になります。

改正後は、18歳・19歳の虞犯少年に対し少年院送致を含む保護処分をすることができなくなくなりました(少年法65条1項)。

 

4 推知報道禁止の特則
1 条文

家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない(少年法61条)。

第六十一条の規定は、特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合における同条の記事又は写真については、適用しない(少年法68条)。

 

2 条文の説明

特定少年のとき犯した罪により・・・」という文言となっているので、犯行時18歳未満であった場合、推知報道禁止は解除されません。

「・・・公訴を提起された場合」という文言となっているので、事件直後や家裁審判の段階、不起訴処分や略式起訴の場合、推知報道禁止は解除されません。

 

3 デジタル タトゥー問題

社会の正当な関心に応える要請と、インターネット普及により情報が半永久的に閲覧可能となり特定少年の更生の妨げになるという不利益をバランシングして、裁判員裁判対象事件は推知報道禁止が解除されうるとされています。

参考:少年法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
「特定少年のとき犯した罪についての事件広報に当たっては、インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないことの周知に努めること」

参考:最高検の令和4年2月8日付け最高検察庁総務部長事務連絡 少年法等の一部を改正する法律の施行に伴う事件広報について
「基本的な考え方としては、犯罪が重大で、地域社会に与える影響も深刻であるような事案については、特定少年の健全育成や更生を考慮しても、なお社会の正当な関心に応えるという観点から氏名等を公表することを検討すべきものと考えられます。例えば、裁判員制度対象事件については、一般的・類型的に社会的関心が高いといえることから、公判請求時の事件広報に際して氏名等を公表することを検討すべき事件の典型であると考えられます。」

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