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コラム:複数の神経症状と後遺障害逸失利益の労働能力喪失率

2024.02.29
1 はじめに

神経症状の後遺障害が残存した場合、等級は、12級13号、14級9号のいずれかとなります。そして、首、肩それぞれについて神経症状が残存し、それぞれ14級9号と認定された場合でも、自賠責保険では、等級は上がらないので14級ということになります。

もっとも、首のみ神経症状が残った場合、首と肩の両方に神経症状が残った場合とでは、後者のほうが労働能力の喪失の程度は大きいとも考えられそうです。

名古屋地判令和3年3月12日では、まさに上記のような事案において、被害者側が通常よりも高い労働能力喪失率を主張した事案になります。以下、裁判所の判断を紹介します。

 

2 事案の概要

被害者には、頚部の頚部痛及び右上肢のしびれ、右肩の圧痛等並びに左肩の圧痛等の症状が残存し、これらはいずれも「局部に神経症状を残すもの」として、それぞれ後遺障害等級14級9号に該当する後遺障害が残存しました。

そこで、被害者側は、頚椎単独の後遺障害よりも頚椎と両肩関節の複合障害の方が労働能力等に対する障害の程度が大きいとする内容の医師の作成した「医学意見書」を提出するなどし、労働能力喪失率は9%を下回らないことを主張しました。

 

3 裁判所の判断

上記後遺障害による労働能力喪失の程度については、本件事故当時原告X1は専業主婦であり、家事労働に従事していたこと、前記認定の後遺障害はいずれも近接した部位の障害であり、両肩の圧痛についてはその労働能力に影響を及ぼすものではないことなどを考慮の上、5%を相当と認める。
たしかに、後遺障害が1つよりも複数の方が一般的には障害の程度としては大きいといえるものの、前記のとおり、原告の従事する労務内容と残存した後遺障害の内容からすれば、前記認定の5%を超える労働能力が喪失したものとは認め難い。

 

4 最後に

裁判所は、一般論として、後遺障害が1つよりも複数の方が障害の程度としては大きいことを認めたうえで、被害者の従事する労務内容と残存した後遺障害の内容を考慮し、5%を超える労働能力喪失を認められないとしました。

本件は、専業主婦の事案でしたが、これが肉体労働を主とする仕事に従事している場合は、5%を超える労働能力喪失が認められる余地があるといえるでしょう。

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