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コラム:負担付き特定財産承継遺言の取消し

2023.11.19
1 負担付き特定財産承継遺言とは?

例えば、遺言者には長男と次男がいるが、次男には障害があったとします。この場合、遺言者は、次男が安定した生活を送ることができるようにするため、長男に全て遺産を相続させる代わりに、長男が次男を扶養する内容の遺言書を作成することがあります。

具体的には、
1 遺言者はすべての財産を長男に相続させる。
2 前項の相続の負担として、長男は遺言者の次男の生存中、同人を扶養し、必要な医療を受けさせるとともに、次男に対し、生活費として、毎月〇日限り、月額〇円を支払わなければならない。
という内容の遺言です。

このような遺言は、負担付き相続させる旨の遺言といわれています。相続させる旨の遺言は改正後は特定財産承継遺言となりましたので、負担付き特定財産承継遺言となります。

 

2 負担付き特定財産承継遺言の取消し
1 負担付遺贈の取消し

民法では、負担付遺贈について以下の①②の規定があります。

①「負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。」(民法1002条1項)

②「負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」(民法1027条)

 

2 負担付き特定財産承継遺言の取消し

これに対して、負担付き特定財産承継遺言は、同趣旨の規定はなく、準用規定もありません。もっとも、負担付遺贈の規定を準用されると解釈されています。

 

3 仙台高決令和2年6月11日

以下では、負担付特定財産承継遺言の相続人(義務者)がその負担した義務を履行しなかったので、相続人の一人が家庭裁判所に対し遺言の取消しを請求したを紹介します。

この事案は、基本的には1で述べた事例と同じでしたが、負担の内容は「生活の援助をすること」と抽象的に記載されていたにすぎませんでした。

裁判所は、以下のとおり、相続人(義務者)の責めに帰することができない事情があるので、遺言を取り消すことが遺言者の意思にかなうものではない、と判断しました。

・相続人(義務者)には、月3万円を援助する義務があること、計111万円の不履行があること
・その一方で、遺言の文言が抽象的であり解釈が容易でないこと
・相続人は、今後も一切の履行を拒絶しているわけではないこと
・相続人は、義務の内容が確定すれば履行する意思があること

 

4 最後に

遺言一般については関連記事をご参照ください。

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