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コラム:職場内盗撮と会社の法的責任

2024.02.10
1 はじめに

女性従業員の出勤後、男性従業員の一人がロッカー室に入って紙袋に隠匿したビデオカメラを作動させ、女性従業員がロッカー室で着替える姿を撮影した事件について、①本件盗撮行為は「職務の執行につき」(民法715条1項)なされたものか、②本件盗撮行為は被告の防止義務違反により生じたものかが争点となった東京地判平成25年9月25日を紹介していきます。

 

2 「事業の執行につき」について

裁判所は、以下のとおり、問題の盗撮行為は「事業の執行につき」行われたとはいえないとし、会社の使用者責任を否定しました。

「『事業の執行につき』とは、使用者の事業ないし被用者の職務の範囲内に属する行為、ないしは、その外形を備えている行為をいう。前記(1)アエオによれば、原告は、被告千葉支店のロッカー室において、直接の上司であった千葉支店長のAから、私服から事務服に着替える様子をビデオカメラで撮影される被害を受けたことが認められるが、Aの本件盗撮行為は、原告が着替えをする姿を見たいというAの欲望を満たす行為であって、事業上の必要性に基づくものではなく、その態様も、被告の業務用のビデオカメラを使用しているものの、原告に気づかれないよう隠匿したビデオカメラで隠し撮りをするというものであって、Aの職務上の権限や上司としての地位を利用したものともいえないから、上木建築業者である被告の事業の範囲ではなく、被用者であるAの職務の範囲内に属する行為でもなく、その外形を備える行為でもない。したがって、本件盗撮行為は「事業の執行につき」行われたと認めることはできない。

 

3 防止義務違反について

裁判所は、以下のとおり、会社が男性従業員の盗撮行為を予見して、防止措置をとる義務があったとは認められない、としました。

本件盗撮行為は、原告の出勤後、Aがロッカー室に入って紙袋に隠匿したビデオカメラを作動させ、原告に知られぬまま、原告がロッカー室で着替える姿を撮影するというものであり、軽犯罪法に違反する犯罪行為であって(以下略)、Aにおいて原告はもちろん他の被告社員にも知られぬよう行うものであり、被告においてかかる本件盗撮行為を予測し、防止することはできなかったと認められる。そうすると、被告が本件盗撮行為を予測して、その防止のため女子更衣室を設けたり、ビデオカメラの保管を厳重に行ったりする義務があるとはいえず、本件盗撮行為が発生したことについて被告に防止義務違反があるとは認められない。
また、本件盗撮行為という軽犯罪法に該当する行為をしないこと、及び、被告の備品を業務以外に使用しないことは、被告の従業員として当然の責務であるから、被告がAに改めてこれを注意指導する必要があるとはいえず、注意指導をしなかったことと本件盗撮行為との間に相当因果関係があるとはいえない。

 

4 最後に

以上、職場内盗撮と会社の責任について説明しました。お困りの方は、のむら総合法律事務所までご相談ください。

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