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コラム:兼業主婦の休業損害の裁判例

2023.12.21
1 はじめに

兼業主婦が事故後も仕事を一切休まず働き続けたため現実収入の減少が一切なかった事案において、家事労働分の休業損害が認められなかった札幌地判令和3年2月5日(自動車保険ジャーナル2096号掲載)を紹介します。

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2 事案
1 仕事内容、家族構成

原告は、本件事故時、介護支援専門員として、平日午前9時から午後5時までフルタイムで勤務し、平成29年は372万1457円の年収を得ていた。また、夫、21歳の子(学生)、19歳の子(アルバイト)と同居して、家事を行っていた。

 

2 事故の衝撃の程度

本件事故は、停車中の原告車(エルグランド)に対して、被告車(軽自動車)が後退進行して衝突したというものであった。
本件事故の結果、原告車・被告車とも、修理代24万円余の損傷が生じたが、損傷はいずれも擦過痕が中心であり、目立った凹損は確認できない。

 

3 当事者の主張と裁判所の判断
1 原告の主張

原告の職種は、デスクワークが中心であったことから、本件事故後、辛抱しながら仕事を続けた結果、給与額の減少はなかったが、十分な家事労働を行うことができなくなった。家事労働能力の喪失分の休業損害として、平成29年度賃金センサスの女性労働者全年齢平均賃金額377万8200円、治療期間187日、労働能力喪失率50%で計算した休業損害を請求する。

 

2 被告の主張

原告は、午前8時から午後5時まで勤務して、賃金センサスの平均賃金にほぼ相当する収入を得ているのであって、これとは別に、家事労働能力の喪失分を観念する余地はない。

 

3 裁判所の判断

原告は、兼業主婦として、家事労働にも従事していたが、フルタイムでの就労を継続することに支障がなかった以上、家事労働についても、休業損害として評価すべき労働能力の低下が生じていたとは考え難い。

 

4 まとめ

本件は、事故状況や双方車両の損傷状況からして衝撃の程度は軽微であり、身体に対する衝撃の程度もまた軽微であった事案でした。そのため、裁判所は、身体への衝撃が小さい→家事労働に影響はそこまでないと判断した可能性があります。加えて、家族構成は自営業の夫もおり、子どもは二人とも20歳程度であったので、事故前の家事労働はそこまで負担感はなかったとも判断された可能性もあります。

 

4 最後に

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