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コラム:財産開示手続の概要

2024.02.28
1 はじめに

令和元年度の民事執行法改正により、財産開示手続が見直され、実効性が強化されることになりました。そこで、以下では、財産開示手続の開始要件、手続の流れ、罰則強化等について概略を説明していきます。

 

2 開始要件
1 債務名義

執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立て」であることが必要です(民事執行法197条1項本文)。

財産開示手続は平成15年改正で導入され、その頃は、調停調書、執行証書(執行受諾文言のある公正証書)、支払督促等による申立ては認められていませんでした。しかし、令和元年度の改正では、債務名義の範囲が拡大され、調停調書などによる申立ても認められることになりました。

2 不奏功等要件

次のいずれかの要件に該当することが必要です(民事執行法197条1項本文)。

①「強制執行又は担保権の実行における配当等の手続・・・において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。」(1号)

②「知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき」(2号)

①は、配当手続または弁済金交付までの手続が実施されたが、完全な弁済を得られなかったときに限定されることになります。そのため、実務では、②での申立てが大半とされています。

 

3 再実施制限に該当しないこと

債務者・・・が・・・申立ての日前三年以内に財産開示期日・・・においてその財産について陳述」していないこと、になります(民事執行法197条3項本文)。

 

3 手続の流れ
1 概要

債権者の申立て

裁判所が開始要件を審査し、実施決定

債務者に決定を送達

(抗告期間経過後)実施決定が確定

裁判所は、債務者に、財産開示期日呼出状、財産目録期限通知書、財産目録用紙を送達し、期日を指定

債務者が開示期日に出頭し、陳述

 

2 財産目録

財産目録は、積極財産のみ記載されることになります。反対に、消極財産(例えば金融機関からの借入金、取引先の買掛金)は記載されません。

財産目録は、債権者には送達されません。そのため、債権者は、債務者から財産目録の提出があった後、閲覧謄写して、期日に臨むことになります。

 

3 財産開示期日

債権者は、「債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる。」とされています(民事執行法199条4項)。もっとも、探索的な質問をすることは認められていません。

債権者が希望した場合、続行期日が設けられる場合があります。また、過去には、財産開示手期日において訴外の和解が成立した事例もあります。

4 不出頭に対する制裁
1 改正法の内容

以下の者は、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」とされています(民事執行法213条1項)

①「執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者」(5号) →正当な理由なく出頭しない場合

②「財産開示期日において宣誓した開示義務者であつて、正当な理由なく第百九十九条第一項から第四項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたもの」(6号) →虚偽陳述をした場合

 

2 趣旨

改正前は30万円以下の過料でしたが、不出頭率が高かったため、手続の実効性が低くなっていました。そこで、実効性を高めるため過料から刑罰に変更されました。

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