1 はじめに
赤信号などで停車中の四輪車が、同じ四輪車に追突された場合、その衝撃の大小と身体への衝撃の大小は連動します。
そして、身体への衝撃の程度の大小は、損害賠償の範囲、具体的には、相当な治療期間の範囲(受傷否認を含む)であったり、後遺障害(特に14級9号)の該当性に影響を及ぼすことになります。
そこで、以下では、事故の衝撃の程度(ひいては身体への衝撃の程度)を判断するための考慮要素を説明し、裁判例を紹介していきます。
2 事故の衝撃の程度の判断要素
事故の衝撃の程度(ひいては身体への衝撃の程度)は、以下の要素を総合して判断することになります。
①(実況見分調書上)被害車両は追突により何メートル押し出されたのか
②損傷箇所、修理費の額
③加害車両の速度の高低
④エアバッグが作動したか否か
以下では、各要素が問題となった裁判例を紹介していきます。
3 裁判例
1 大阪高判令和3年9月14日
裁判所は、損傷が塗装中心で凹みがなかったこと、修理費用が6万円ほどと10万円に満たないことから、衝撃の程度は強度のものと推認することはできないとしました。
「上記見積書(甲2)から認められる控訴人車両の損傷状況は、後部バンパーの塗装が中心の総額6万4670円の修理を要するものにすぎず、衝突が強度のものであったと推認することはできない。」
2 福岡地判令和3年7月8日
裁判所は、損傷箇所、修理費用について、「本件事故により、原告車両は、リアバンパフェイシアの取替え、リアフロア及び左リアサイドメンバの修理等を要する損傷を負い、その修理費用は15万3000円であったが、原告車両の後部には大きな凹みまでは生じていない。(甲12、乙3)」と認定しましたが、最終的には「原告が受けた衝撃は必ずしも軽微なものとはいえない。」としました。
本件では、凹みはなかったものの、修理費用が10万円を超えているので、衝撃の程度は軽微とはいえないと判断したものと思われます。
3 東京地判令和3年9月22日
事案は、被害車両は「一度停止してその後発進した被告車からの追突を受けた」というものでした。
裁判所は、「本件事故は低速での追突であり、それによる衝撃も大きくないと考えられる。」としました。
4 最後に
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