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コラム:財産管理と寄与分

2023.12.28
1 はじめに

例えば、相続人の一人が被相続人のアパートを管理会社に頼まずに長年にわたり管理していた場合、その労苦が遺産分割において寄与分(民法904条の2第1項)として考慮される場合があります。

このように、相続人の一人が被相続人の財産を管理していた場合、寄与分が認められるためには、以下の5要件を全てを充足する必要があるとされています。
①特別の寄与
②無償性
③財産の維持又は増加との間に因果関係があること
④財産管理の必要性
⑤継続性

以下、各要件について簡単に説明し、裁判例を紹介します。

 

2 各要件について
1 特別の寄与

特別の寄与を主張する相続人が被相続人の自宅の草刈りや空気の入れ換えをしていたといった程度では、「特別」の寄与があったとは認められません。

 

2 無償性

寄与分を主張する相続人が被相続人から財産管理の対価として金銭を得ていた場合、あるいは被相続人の自宅で同居し、賃料を一切払っていない場合は認められません。

 

3 財産の維持又は増加との因果関係

寄与分を主張する相続人が賃貸不動産の清掃や賃借人等への対応をしていたとしても、この程度の行為と財産の維持又は増加との間に因果関係は認められません。

 

4 財産管理の必要性

管理会社と契約している場合、財産管理の必要性は認められません。

 

5 継続性

寄与分を主張する相続人が、被相続人が数ヶ月入院している期間中、臨時で管理していたとします。この程度では継続性の要件は認められません。

 

3 寄与分額の算定方法
1 計算方法

相当と思われる財産管理費用×裁量割合

 

2 相当と思われる財産管理費用

管理会社に管理を委託する場合、管理料の相場は賃料の5~10%になります。そこで、財産管理費用は、この相場を参考にして算出することになります。

 

3 裁量割合

裁量割合を乗じるのは、素人が管理することので、専門性のある不動産管理会社と同列に考えることは出来ないためです。

 

4 長崎家裁昭和62年9月1日審判
1 事案

寄与分を主張する相続人は、次のようなことをしてきました。
・自身の費用で、被相続人の自宅を改造し、母屋を間貸し、小屋を使えるようにした。
・その後、被相続人の自宅の老朽化にともない建物を解体更地とするため、借家人の立退き交渉や建物の解体・滅失登記手続をした。
・被相続人の依頼により、上記更地の買手を探し、売買契約を締結した。

 

2 裁判所の判断

裁判所は、「土地売却にあたり借家人の立退交渉、家屋の取壊し、滅失登記手続、売買契約の締結等に努力したとの事実は認められるので、売却価格の増加に対する寄与はあつたものとみることができる。そして、その程度は、不動産仲介人の手数料基準をも考慮し、300万円と認めるのが相当である。」としました。

 

5 最後に

以上、財産管理と寄与分について説明しました。寄与分について一般的なことは関連記事をご参照ください。

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✔寄与分一般についての解説記事はこちら▶その他の問題(寄与分・特別受益)

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