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コラム:年金受給者の婚姻費用

2024.02.23
1 はじめに

熟年夫婦の一方が別居し、相手方に対し婚姻費用を支払うよう請求するケースにおいて、相手方(65歳)が、年金のほかに収入があるため70歳まで年金を受給しないとします。この場合、相手方が支払う婚姻費用の計算において、年金額は一切考慮されないことになるのでしょうか。このような論点が問題となった東京高裁令和元年12月19日決定を紹介します。

 

2 裁判所の判断
1 義務者側の主張

義務者は、年金の受給開始時期は任意に選択できるものであり、自身の選択として現時点で年金の受給をしていないのであって、婚姻費用の減額を目的として自身の収入を減らしているわけではないと主張していました。

 

2 裁判所

これに対し、裁判所は、「同居する夫婦の間では、年金収入はその共同生活の糧とするのが通常であることからすると、これを相手方の独自の判断で受給しないこととしたからといって、その収入がないものとして婚姻費用の算定をするのは相当とはいえない。」とし、「65歳で年金の受給を開始していれば、年額約250万円の年金を受給することができるものと認められることからすると、少なくとも再雇用の期間が満了して相手方が無職となった平成31年4月以降は、上記の年金収入を給与収入に換算した約390万円・・・について、相手方が本来であれば得ることができる収入として、婚姻費用の分担額の算定の基礎とするのが相当である。」と判断しました。

なお、上記決定では、婚姻費用の基礎収入について、年金額250万円を給与収入に換算した390万円としています。というのも、年金受給者は、給与所得者と異なり職業費がかからないので、年金収入に職業費(被服費、交通費、交際費など)を加算する必要があるためです。

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