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コラム:特別縁故者への相続財産分与

2023.11.18
1 制度の概要
1 条文

「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」は、家庭裁判所に請求することにより、相続財産の全部又は一部を取得できる可能性があります(民法958条の2)。

2 趣旨

特別縁故者への相続財産分与制度は、被相続人の合理的意思を推測探求し、遺言、遺贈、死因贈与を補完し、被相続人の生前意思の実現を図る制度になります。

例えば、相続人ではない親族が、被相続人の生前、被相続人の療養看護などに努めていたとします。ところが、被相続人が遺言などを残してなかった場合、相続人ではない親族は、相続財産を取得することはできません。しかし、被相続人の生前の意思からすれば、被相続人は当該親族に相続財産を取得させようとしていたと認められれば、当該親戚は相続財産を取得することができます。

 

2 特別縁故者とは?
1 定義

一般的には、相続人ではない親族は、被相続人との間で「親族としての通常の交際の範囲を超える」関係があれば、特別縁故者に該当します。

2 裁判例

これまで多数の裁判例の集積がありますが、比較的最近の裁判例をご紹介します。

東京高裁平成27年2月27日決定(判例タイムズ1431号126頁以下)は、「・・例えば被相続人と生計を同じくしていた者と同視できるほどに被相続人と密接な生活関係があったとか、その程度はともかく、日常的に被相続人の自宅を訪れて何くれとなく被相続人の日々の生活等を援助していたとか、被相続人の介護を担っていたなど、被相続人との間で実際に密接な生活上の一体関係や援助関係等が認められることが前提となっているものと解するのが相当である。」としています。

この決定からすれば、特別縁故者と認められるためには、生前の縁故が必要であり、死後の縁故が補完的に考慮されるにすぎません。

実務では、申立人が、被相続人の葬儀、祭祀法事、遺産管理等に関わったと主張するケースもあります。もっとも、このような事情があったとしても、生前の縁故がなければ、申立ては認められることはまずありません。

 

3 手続の流れ
1 申立て

別縁故者に該当すると主張する者は、家庭裁判所に申立書を提出することになります。提出期限がありますので、家庭裁判所に確認することになります。

なお、申立人が複数おり、複数の申立人の代理をする場合、各申立人の双方代理申述書を提出する必要があります。

 

2 事実の調査

家庭裁判所は、職権で事実の調査を行うことになります(家事事件手続法56条1項)。

事実の調査の方法は、各裁判所によって異なると言われています。
過去の例でいえば、京都家庭裁判所で係属した事件では、相続財産清算人の意見書(家事事件手続法205条)だけでなく、家庭裁判所調査官による調査も行われました。

他方、神戸家庭裁判所で係属した事件では、事実の調査において、調査官調査は行われず、申立人から提出された資料、相続財産清算人の意見書、申立人の反論書面、相続財産清算人の再反論書面といった書面の調査のみ行われました。

 

3 通知

家庭裁判所は、事実の調査を行った場合、「その結果が当事者による家事審判の手続の追行に重要な変更を生じ得るものと認めるときは、これを当事者及び利害関係参加人に通知しなければならない。」とされています(家事事件手続法63条)。

過去の例では、申立手が認められなかった事案では、裁判所から事実の調査をした旨の書面が届きました。

 

4 抗告審

申立人の一人から即時抗告があった場合、その全員について確定遮断効と移審効が生じることになります(家事事件手続法204条2項)。

抗告審では、民事訴訟と異なり不利益変更禁止の原則が働かないので、原審よりも不利な判断がなされることもあります。

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