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コラム:遺留分侵害額請求について

2024.01.04
1 はじめに

改正民法により、遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求へと名称が変わりました。そして、権利の性質も大きく変わりました。

そこで、以下では、遺留分侵害額請求について一般的なことを説明していきます。

 

2 遺留分侵害額請求の性質

改正前、遺留分権利者が権利行使をした場合、不動産の遺贈や贈与などが一部無効になり、遺留分権利者と受遺者等が当該不動産を共有することになりました。

これに対し、改正後は、遺留分権利者が権利行使をした場合でも、遺贈や贈与は一部無効とならず、権利移転はの効力は維持されることになりました。そして、その代わりに、権利行使した遺留分権利者には、遺留分侵害額に相当する金銭支払債権が発生することになりました(民法第1046条第1項)。

 

3 遺留分侵害額の計算
1 計算方法

以下のとおり①→②→③の順に計算することになります。

遺留分算定の基礎となる財産額=被相続人が相続開始時に有していた財産の価額+贈与額-相続債務額(民法1043条第1項)

個別的遺留分額遺留分の基礎となる財産額×個々の遺留分権利者の遺留分率(1042条第1項)

③遺留分侵害額=個別的遺留分額-(贈与額+遺贈財産額+遺留分権利者が相続分に応じて取得すべき遺産額)+遺留分権利者が負担すべき相続債務額(1046条第2項)

 

2 遺留分算定の基礎財産に算入される贈与

贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り算入されることになります(民法1044条1項)。例外として、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間した特別受益たる贈与に限定されます(1044条第3項)。

また、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与は、期間制限なく、遺留分算定の基礎財産に算入されます(1044条第1項第2文)。

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✔遺留分算定の基礎財産に含まれる生前贈与の範囲についての解説記事はこちら▶コラム:相続人への生前贈与と遺留分侵害額請求

 

4 遺留分侵害額請求の行使方法

遺留分権利者は、遺留分侵害額請求に際し、遺留分侵害額を具体的に示して請求する必要はありません。

権利行使された受遺者等は、遺留分侵害額に相当する金銭支払債務を負うことになります。この金銭債務は期限の定めがない債務となります(民法412条3項)。したがって、受遺者等は、遺留分権利者から具体的な金額を示されて請求を受けた時点から履行遅滞となります。

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✔遺留分侵害額請求の行使方法についての解説記事はこちら▶コラム:遺留分侵害額請求権の期間制限

 

5 受遺者等の保護について
1 相当の期限の許与

権利行使された受遺者等は、裁判所に対し、遺留分に相当する金銭の支払いについて相当の期限の供与を求めることができます(民法第1047条第5項)。

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✔受遺者等による相当の期限供与についての解説記事はこちら▶コラム:受遺者等に対する期限の供与

 

2 代物弁済

遺留分侵害額請求を受けた受遺者等は、遺留分侵害額に相当する金銭を支払う代わりに、不動産などの現物を給付する権利は認められていません。このような権利を認めることになれば、遺留分権利者は遺留分義務者から不要な現物を押し付けられる可能性があるからです。

もっとも、遺留分権利者側が自ら進んで遺留分侵害額を現物給付で受けることが妨げられるわけではありません。

この場合、受遺者等が遺留分侵害額に相当する金銭を支払う代わりに現物を交付することになるので、代物弁済となります。代物弁済の場合、受遺者等には譲渡所得税が発生する可能性がありますので、注意が必要です。

 

3 遺留分権利者の承継債務を消滅させた場合

例えば、受遺者等が、被相続人からマンションの遺贈を受け、その際、遺留分権利者が承継した住宅ローン支払義務についてを免責的に債務を引き受けたとします。この場合、受遺者等は、遺留分権利者に対し、遺留分侵害額から遺留分権利者が負担を免れた分を消滅させるよう求めることができます。

条文は、「前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる」(民法第1047条第3項)となっています。

 

6 遺言作成上の注意点

このように、受遺者等は、遺留分権利者に対し、遺留分侵害額を金銭で支払うことになります。受遺者等において手持ち資金が潤沢にあれば問題ありませんが、そうではない場合、受遺者等は相続した不動産を換価するなどしなければなりません。

そこで、遺言者は、受遺者等の金銭的負担を考慮し、不動産だけでなく預貯金も行き渡るようんしたり、あるいは生命保険の受取人を受遺者等とすることを考えなければいけません。

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