1 はじめに
近時、資産がなく、銀行からの借入れができない企業や個人事業主が、支払期限前の売掛債権や請負代金債権をファクタリング会社に例えば額面の20%減で債権譲渡し、当面の運転資金を確保したが、最終的には支払不能状態に陥り、破産手続を申し立てるケースが散見されます。そこで、以下では、ファクタリングについて説明していきます。
2 ファクタリングとは
1 総論
ファクタリングは、資金調達方法の一つで、企業が有する債権(例えば売掛債権、請負代金債権)を履行期前に譲渡し、債権を現金化する方法になります。
ファクタリングには2種類あり、二者間ファクタリング、三者間ファクタリングがあります。
2 二者間ファクタリング
二者間ファクタリングとは、企業(個人事業主)とファクタリング会社の二者間で、債権譲渡契約、債権売却代金交付、返済が行われる形式です。企業が、取引先から債権を回収し、それをファクタリング会社に支払うことになります。実務では、ほぼ二者間ファクタリングになります。
このような形式をとるので、取引先は一切関与せず、自社の債権が譲渡されたことを知ることはありません。ファクタリング業者は、取引先に知られずに早期に資金調達できることを宣伝文句としています。
企業が期限内にファクタリング業者に代金を支払わなかった場合、ファクタリング会社は、取引先に内容証明郵便で債権譲渡通知を発送したり、債権譲渡登記ファイルに登記をするなどした上で、取引先に直接請求することになります。
3 三者間ファクタリング
三者間ファクタリングは、取引先の関与の下、債権譲渡契約など行う形式になります。このような形式は、取引先に債権譲渡をしなければいけないほど財務状況が悪化しているのではないかと思われてしまい取引中止になるなどのリスクがあります。
3 実質は違法な貸付け
ファクタリングは、法形式上、債権譲渡契約になります。しかし、特に二者間ファクタリングの場合、取引先からの債権回収は全て企業側が行うなどの実態からすれば、金銭消費貸借契約といえます。
例えば、企業が額面100万円の売掛債権を履行期限前にファクタリング会社に代金80万円で債権譲渡したとします。この場合、経済的には、80万円を借りて20万円の利息を支払うのと同じなので、年利300%になります。これは、利息制限法や貸金業法に反する違法取引となります。
4 裁判所の傾向
二者間ファクタリングが実質的に金銭消費貸借契約と認定された場合、利息制限法や貸金業法の違反を主張することもできますし、あるいは暴利行為なので公序良俗に反し無効であると主張することができます。
もっとも、事案にもよりますが、裁判所が実質的に貸付けであると認定した裁判例は多くはないとされています。
5 取引先側からの目線
取引先側は、ファクタリング会社から債権譲渡通知が届いて初めて債権譲渡がなされたことを知ることになります。取引先側としては、企業とファクタリング業者のいずれに売掛金を支払えばよいか悩ましいですが、一つの方法としては法務局に供託する方法があります。
6 最後に
以上、企業とファクタリングについて解説しました。企業の破産手続については関連記事をご査証ください。
【関連記事】
✔企業の破産手続についての解説記事はこちら▶中小企業の破産/法人破産
✔のむら総合法律事務所に関するご案内はこちら▶事務所紹介