1 はじめに
相続税申告書は、被相続人の遺産、その評価額などが記載されています。また、相続開始前3年間の生前贈与や生命保険金も相続税の課税対象となるので、それらも相続税申告書に記載されていることがあります。
このように、相続税申告書は、被相続人の遺産の全貌のみならず、特別受益の有無をも明らかにするものであり、適正な遺産分割の実現による紛争の解決に資するものといえます。
2 文書提出命令の可否
福岡高裁宮崎支部平成28年5月26日決定は、被相続人の遺産につき遺産分割調停の申立てをした相続人が、他の相続人が税務署長に対して提出した相続税申告書及び添付資料について文書提出命令を申し立てた事案において、文書提出を認めた原審決定を以下のとおり取り消しました。
「本件文書のような相続税申告書及びその添付書類は、その記載内容からみて、その提出により公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれの存在することが具体的に認められ、民事訴訟法220条4号ロに該当するというべきである。」
したがって、相続人は、現状、他の相続人が提出した相続税申告書等を強制的に取得することはできません。
3 最後に
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