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コラム:家事従事者(専業主婦)の休業損害

2024.02.29
1 はじめに

かつて、家庭内においては家族の労働に対して対価の授受が行われないので、妻の家事労働が財産上の利益を生じないとし、家事労働の休業損害を否定する考え方もありました。

しかし、最高裁判所は、「結婚して家事に専念する妻は、その従事する家事労働によつて現実に金銭収入を得ることはないが、家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げているのである。」とし、家事労働について休業損害を認めました。

以下では、家事労働の休業損害について説明していきます。

 

2 基礎収入
1 原則

事故発生時の賃金センサスの女性の学歴計・全年齢平均賃金の賃金額になります。

 

2 高齢者

高齢者の場合は、年齢別平均賃金が採用される傾向にあります。

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✔高齢者の専業主婦の基礎収入についての解説記事はこちら▶コラム:高齢家事従事者と休業損害

 

3 休業日数(休業期間)
1 認定が難しい理由

専業主婦の場合、給与所得者と異なり、完全に休業した日数が必ずしも明らかではありません。そのため、治療期間がある程度長期化している場合、休業日数の認定方法は大きく2つの考え方があります。

 

2 考え方1

休業日数を全通院期間とし、20~30%を乗じる計算方法になります。

 

3 考え方2

症状の回復とともに、徐々に家事労働ができるようになっていくことが通常です。そこで、休業日数を全通院期間とし、例えば、事故直後1か月が100%とし、2ヶ月目は50%、3か月目は20%・・・と乗じる割合を逓減させる計算方法になります。

 

4 兼業主婦
1 基礎収入

現実収入、事故発生時の賃金センサスの女性の学歴計・全年齢のうち、いずれか高い方を基準とします。

 

2 現実収入を加算しない理由

「有職の主婦は、時間的な制約等から専業主婦と比較して家事労働が質量共に劣るのが通常であり、特別の事情のない限り、家事労働と他の労働を合わせて一人前の労働分として評価するのが相当であるとされている」とされています(平成15年度赤本、鈴木純子「家事労働の逸失利益性」294頁以下)。

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✔兼業主婦の休業損害についての裁判例の解説記事はこちら▶コラム:兼業主婦の休業損害の裁判例

 

5 男性の家事従事者
1 認められる場合

女性が働き、その収入で家族の生計を維持し、男性が家事労働を行っている場合があります。男性が家族のための家事を継続的にこなしていると認められれば、女性同様、家事の休業損害が認められます。

 

2 基礎収入

基礎収入は、事故発生時の賃金センサスの「女性」の学歴計・全年齢で計算することになります。家事労働の金銭的評価において男女差はないからです。

 

6 一人暮らしの場合

家事労働が休業損害として認められるのは、他人のための家事労働を行ったとはいえるからです。そのため、自分自身の生活のためだけに家事をしていると評価される場合、休業損害は認められません。

 

7 最後に

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