1 はじめに
交通事故により車両が損傷した場合、被害者は、修理期間中や買換期間中に代車を使用することがあります。
代車費用が損害として認められるための要件は、
①現実に代車を使用したこと
②代車使用の必要性があること
③代車の車種・グレード、単価が相当であること
④代車の使用期間が修理または買い換えのために必要な期間であったこと
が必要となります。
以下、各要件について説明していきます。
2 現実に代車を使用したこと
1 原則
実際に代車を使用しなければ代車費用を請求することができません。
2 将来の代車費用請求
関連して、事故車の修理をしていない場合、将来修理した際に発生する代車費用が損害として認められるかが問題となります。
この点については、結論として極めて例外的な場合に認められることになります。すなわち、赤本講義録によれば、「今後代車を使用する高度の蓋然性及び代車費用の発生する高度の蓋然性が認められる場合」は認められる余地がある。もっとも「事故後相当期間経過しても現実に支出していない費用であることから、高度の蓋然性が認められる場面はかなり限定される」とされています。(今川あゆみ裁判官講演録・赤い本2022年版下巻54頁)。
3 友人から代車を借りた場合
友人から車を借りたので実際に代車料を払っていない場合、他から代車を借りた場合に支払う程度の使用料を請求できる場合があります。
この問題について、東京地判平成10年10月7日は、「原告は、現実に代車料を出費していないが、これは、原告の努力で友人から自動車を借りる措置を採ったからである。具体的な費用の約束をしていないとしても、お礼などの名目はともかく、他から代車を借りた場合に支払う程度の使用料を支払うことはやむを得ないというべきであり、その限度で代車料を認めるのが相当である。」と判示しています。
3 代車使用の必要性があること
1 営業用車両
基本的には代車使用の必要性が認められます。
2 自家用車
通勤・通学のために使用していた場合、病人、児童の送迎、買い物等の日常生活のために使用していた場合は、必要性が認められます。
これに対し、レジャー、趣味のために使用していたにすぎない場合であれば必要性が認められない傾向にあります。
なお、事故車以外に車両を保有している場合、必要性が否定されることがあります。
4 代車の車種・グレード、単価が相当であること
1 一般論
代車は、事故車両と同一車種である必要はありませんが、同程度のグレードでなければなりません。ただし、同種・同グレードの代車を借りた場合でも、当該代車の走行距離や時価からして日額が高すぎる場合、代車費用が減額されることがあります(後述の神戸地判令和3年12月16日)。
事故車両が高級外国車の場合、代車は一般的な国産車のグレードの範囲でしか認められないとする裁判例があります(後述の東京地判令和3年11月10日)。
2 東京地判令和3年11月10日
事故車がメルセデスベンツで、代車としてメルセデスベンツEクラスを日額1万5000円で借りたという事案でした。
裁判所は、日額1万円の範囲内で代車費用が認められるとしました。
3 神戸地判令和3年12月16日(自動車保険ジャーナル2120号)
被害者は事故車両と同種・同グレードの代車を日額1万6000円で借りました。もっとも、事故車両は使用時点で初年度登録から10年経過し、走行距離が10万キロメートルを超えており、同年式・同年度・同車種の時価額の平均が50万円程度でした。
裁判所は、代車費用の日額を3000円で計算しました。
5 代車の使用期間が修理または買い換えのために必要な期間であったこと
1 修理の場合
修理の場合(分損の場合)、損傷の場所、程度など具体的事案により異なりますが、通常、1~2週間とされています。
もっとも、部品の調達が困難な場合、2週間を超える代車期間を認めた裁判例もあります。
2 買換えの場合
買替えが必要となってから1か月程度とされることが多いです。
6 代車費用特約
1 はじめに
車両保険に入っている場合、代車費用特約も加入している場合があります。
代車費用特約が使える場合、自身の保険会社から代車費用を払ってもらえるので、知っておくと便利な保険です。以下、簡単に説明していきます。
2 代車期間
最大30日間が多いです。
3 日額
日額5000円、7000円、10000円などがあります。日額5000円のケースが多いと思われます。
4 その他
代車費用特約を利用する場合、レンタカー会社から保険会社に直接請求がいくので、被害者がいったん立て替える必要もありません。
保険会社によりますが、車両保険を使わず、代車費用特約のみ利用する場合、等級は上がりません。
7 最後に
以上、代車費用について説明しました。弁護士費用特約に入っている場合、ご自身の保険会社が弁護士費用を負担することになるため、弁護士費用を心配することなく弁護士に交渉等を依頼することができます(関連記事をご参照ください)。のむら総合法律事務所にお気軽にご相談ください。
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