1 はじめに
車両が事故により損傷した場合、車両を修理することによって原状回復が可能な場合、修理費相当額を請求することができます。
もっとも、修理費相当額が事故前の事故車の市場価格をはるかに超える場合、修理費相当額を請求することはできないとされています。これを経済的全損といいます。
経済的全損の場合に修理費相当額を請求できないのは、「損害賠償制度の目的が、被害者の経済状態を被害を受ける前の状態に回復することにあり、被害者が事故によって利得する結果となることは許されないとの考慮が働いているから」とされています(東京地判平成14年9月9日)。
2 経済的全損か否かの判断
「修理費」と「時価額+買替諸費用」の金額とを比較することになります(前掲裁判例)。
3 買替諸費用
1 問題の所在
経済的全損であるかどうかの判断は、買替諸費用が考慮されることになるので、買替諸費用に該当するのはどこまでかが問題となります。
2 検査・登録手続費用及び車庫証明費用
買替諸費用に含まれます。車両を取得する都度出捐を余儀なくされる法定の費用(手数料)であるためです。
3 検査・登録手続代行費用、車庫証明手続代行費用及び納車費用
買替諸費用に含まれます。これらは「販売店の提供する労務に対する報酬であるところ、車両を取得する都度、検査・登録、車庫証明の手続や納車が必要となり、車両購入者が通常それらを販売店に依頼している実情」があるからです(東京地判平成14年9月9日)
4 その他
その他に、買換諸費用に含まれるのは、環境性能割、自動車重量税(未経過期間分)、車体本体の消費税、廃車費用、リサイクル費用とされています。
4 対物超過特約
経済的全損の場合、修理費用と車両時価額等の差額分について、加害者側の保険で支払われる場合があります。これを対物超過特約といいます。
もっとも、対物超過特約は実際に修理しなければ利用できません。また、上限があり通常50万円までとされています。さらに、被害者側にも過失がある場合は過失分が減額されることになります。
5 最後に
以上、経済的全損の諸問題について説明しました。物損事故の場合、弁護士費用特約に入っておられる場合は、費用倒れの心配なく弁護士に依頼することができます。詳しくは関連記事もご参照ください。
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