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コラム:交通事故と政府保障事業

2023.11.26
1 はじめに

加害者が自賠責保険に加入していない場合、被害者は自賠責保険から保険金を受け取ることができません。このような場合、被害者は、国(国土交通省)の政府保障事業から自賠責保険と同等の保障を受けられる可能性があります(自賠法72条)。政府保障事業に基づく請求は、公法上の請求であり、社会保障給付的な性質を有するとされています。
以下では、政府保障事業についてご説明します。

 

2 申請手続

政府保障事業は以下の場合に申請できます。

①加害者を特定できない場合 例:ひき逃げ

②加害者が自賠責保険に加入せず運転して交通事故を起こした場合
例:自賠責保険が期限切れにより無保険になっていた

③加害者が車を盗んで運転して交通事故を起こした場合

 

3 申請から決定までの流れ

国は、政府保障事業の支給決定以外の業務を損保会社に委託しています。
そのため、被害者は、国から委託を受けた損保会社に対し、政府保障事業の利用申請を行うことになります。
被害者が申請してから保障金を受け取るまでの流れは次のとおりです。

被害者は、損保会社に対し、政府保障事業の利用申請を行います(平成31年1月8日)。

申請を受理した損保会社は、損害保険料率算出機構に調査を依頼します。

損害保険料率算出機構は、調査を経て、その結果を損保会社に報告します。

損保会社は、調査結果を国に報告します。

国は、その調査結果をもとに支給決定し、損保会社にその結果を伝えます(令和元年6月28日)。

損保会社は、被害者に保障金を支払います(令和元年7月11日)。

被害者は、支給決定に不服がある場合、異議申立てを行うことができます。

※大阪地裁令和3年10月7日(自動車保険ジャーナル2113号掲載)は、政府保障事業の申請がなされた事案でしたが、赤文字のとおり、申請から着金までに約半年かかっています。

最後に、保障金は自賠責保険で支払われる金額と同額となります。傷害による損害は限度額が120万円、後遺障害による損害は等級により限度額が定められています。
なお、被害者が労災保険から損害の補填を受けた場合、その全額が控除されます(自賠法73条1項)。
また、保障金請求権は3年で時効となるので注意が必要です。

 

4 政府保障事業と訴訟

裁判所は、損害額の認定に際し、政府保障事業の算定結果に拘束されないとされています(最高裁平成21年12月17日)。
したがって、例えば、被害者は、政府保障事業が後遺障害非該当と認定したのは誤りであり、後遺障害等級14級9号に該当するとして、国を被告とする訴訟を提起することは可能です。もっとも、前述のとおり保障額には限度額があるので注意が必要です。

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