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コラム:交通事故により外貌醜状が残った場合と後遺障害

2024.02.29
1 はじめに

交通事故で、顔や手足に傷を負い、治療を受けたものの傷跡が残ってしまうことがあります。この場合、自賠責では後遺障害に認定されることがありますので、以下、部位ごとに説明していきます。
また、顔に傷を負った場合の後遺症逸失利益についても説明していきます。

 

2 醜状痕の後遺障害等級
1 外貌醜状の後遺障害等級

外貌醜状とは、頭部、顔面部、頸部のように、上肢及び下肢以外の日常露出する部位に醜状(瘢痕・欠損・組織陥没・線状痕)が残った後遺障害のことをいいます。

外貌醜状について、自賠責保険の後遺障害等級は、次のとおりです。
・7級の12 著しい醜状を残すもの
・9級の16 相当程度の醜状を残すもの
・12級の14 醜状を残すもの

実務上、「外貌に醜状を残すもの」(12級の14)に該当するか否かが問題となることが多いです。「外貌に醜状を残すもの」とは、①次のいずれかに該当し、かつ②人目につく程度以上のものを指します。

①については、次のとおりです。
(1)頭部→鶏卵大以上の瘢痕or頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
(2)顔面部→10円銅貨以上の瘢痕or長さ3センチメートル以上の線状痕
(3)頸部→鶏卵大以上の瘢痕

②については、自賠責損害調査事務所において面談が行われ、そこで判断されることになります。

 

2 上下肢の醜状痕

上下肢の醜状について、自賠責保険の後遺障害等級は、次のとおりです。
・14級の4 上肢の露出面→てのひらの大きさの醜いあとを残すもの
・14級の5 下肢の露出面→てのひらの大きさの醜いあとを残すもの

 

3 外貌醜状の後遺障害逸失利益
1 一般論

外貌の醜状は、一般的にそれ自体が身体的能力を左右するものではありません。したがって、外貌醜状は、将来にわたって減収をもたらすようなものではないとされています。

たしかに、事務職の場合、外貌醜状が減収をもたらすとは考えにくいです。しかし、被害者がモデルや営業担当の場合、顔の傷は大きさや場所によっては減収がありえます。

そこで、裁判例では、外貌醜状の場所や大きさ、被害者の職業、年齢からみて、外貌醜状が労働にどのように支障を生じさせるか、将来の昇進・昇級に影響が出るのか、転職する場合の再就職上の不利益の程度等を個別具体的に考慮して後遺障害逸失利益が認められるかを判断しています。

 

2 さいたま地判令和4年1月18日(自保ジャーナル2117号)

【事案の概要】

被害者は男子で、症状固定時の年齢11歳でした。被害者の頭頂部付近にフラップ状の裂傷が生じ、その縫合術を受けたが、抜糸の後もその傷跡が「工」の字形の線状痕として残存していました。

自賠責は非該当でしたが、原告側は、アレルギー体質で肌が弱いために頭髪を伸ばして傷跡を隠すことができないなどとし、後遺障害等級12級14号に該当すると主張していました。

【裁判所の判断】
「・・その傷跡の部位や形状、大きさからすると、頭髪を伸ばすことで隠れることとなり、直ちに労働能力に影響するような外貌醜状ということはできず、後遺障害としては認められない。なお、原告は、アレルギー体質で肌が弱いから頭髪を伸ばすことができないと主張するが、肌が弱いからといって、直ちに頭髪を伸ばすことができなくなるわけではないから、後遺障害の前示判断を左右するものではない。」とし、醜状痕による後遺障害逸失利益を否定しました。

【コメント】
一般論として、年少者の場合は、就労の際の不利益に加えて、醜状痕の存在が人格形成や学業成績に影響を及ぼし、将来の就職における不利益が生ずる場合もあります。上記裁判例は、外貌醜状が労働能力に影響するかといった観点からしか検討されておらず、検討不十分とも考えられます。

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